
会う代わりに、ごはんを作ってくれませんか
単体で見たら、直美の言い方はかっこいい。だが、急に現れた直美がこんなキツイ言い方して、避病院(伝染病専門の隔離施設)内の空気が悪くなりそう。
また、柳生も弱っているのに、「ほっといてくれ!」と強めな言い方をして、ギスギス感が募る。それだけこの急づくりの避病院の中が殺伐としていることの表れなのだろうけれど。極限状態では、人は助け合うこともあれば、誰かを責めて安心しようとすることもある。その両方が、この回では描かれていた。
強気に見える直美だが、本心は怖がっていた。夜になり、「これで合ってるんだよね?私たち」「バーンズ先生に教わったとおりやってるけど。こんな大勢の伝染病の患者さんははじめて」「怖い」とりんに珍しく弱音を吐く直美。
「私だけじゃなかったんだ…」とりん。
「昨日まで必死で。でも今になって怖くて…」
「そりゃ怖いよ…」
ふたりはお互い、恐怖を分かち合った。
翌日、煮沸消毒しているりんの遥か向こうで、お手洗いの穴を掘り続ける、黒川と横沢。りんたちはずっと泊まっていて、お風呂とか着替えとかどうしているんだろう。
「医療というのは存外体力がいるんですね」と実感する記者・横沢。
さらに、伝染病にかかって亡くなったらすぐに焼かれるのだということも知る。そこへ、避病院に運ばれたアサの夫・太助(板橋駿谷)が手伝いに現れた。3日間、様子を見て彼も息子も発症しなかったから来たのだ。
太助と息子は感染していなかったが、避病院に運び込まれる患者は増えていくばかり。お湯を沸かすのも追いつかないし、食事の用意も間に合わない。
困った直美は「私行ってくる。ここは頼んだ」と相変わらず、言葉少なく出ていく。説明セリフが多すぎるドラマというのがあるが、『風、薫る』は説明が少なすぎるドラマである。
直美は、村までいって呼びかける。村は、伝染病が怖くてどこも戸を閉め、皆なかに閉じこもっているようだ。
「今、患者さんが増えて手が足りていません。調理をする人がいないんです。調理の道具も足りません。伝染を広げないための調理の仕方を教えますし、どなたかお願いします!」
「この病気は、人と会えないんです。家族と会えない。話せない。だから、会う代わりに、話す代わりに、ごはん作ってくれませんか? きっと、皆さんのお味噌汁を飲んだら、家に帰ろうって元気が出るはずなんです。助けてください!お願いします!」







