「共働きなのに、なぜか自分ばかりが家事や育児に追われている」「夫のほうが帰りが早いはずなのに、部屋が散らかったままになっている」――。そんな不満やモヤモヤを抱えている女性は少なくありません。そもそも家庭内の負担が女性に偏ってしまうのはなぜなのでしょうか。話題の書籍『働き方の科学』より、共働きであっても「夫が家事をやらない」科学的な理由を明らかにし、私たちが直面しているジェンダー格差の深層に迫ります。(構成/ダイヤモンド社・上村晃大)

Couple arguing about housework at home, wife throwing dirty laundry from basket at lazy husbandPhoto: Adobe Stock

妻が主な稼ぎ手であっても、家事は「妻の役割」?

 前回の記事で、男女間の賃金格差の主な理由は、仕事における「時間の柔軟性」が不十分だからであると明らかにした研究を紹介しました(*1)。

 つまり、長時間労働や、急な呼び出しの対応、休日勤務といったような「時間を無視した働き方」に高い報酬が与えられているということです。

 家事育児などの家庭内の対応が偏りがちな女性はそのような働き方が難しく、結果として男女間の賃金格差が残ってしまうのです。

 では、なぜそもそも家事育児などの家庭内の対応が女性に偏りがちなのでしょうか? 話題の書籍『働き方の科学』では、共働きでも夫がなかなか家事をやらない理由を検証した研究を紹介しています。

 チリ教皇庁立大学のジーンヌ・ラフォーチュン教授らは、共働きでも夫がなかなか家事をやらない理由を検証しました(*2)。
 図1は、アメリカの「生活時間調査」を用いて、異性カップルと同性カップルの家事分担を比較したものです。
図1 妻のほうが稼いでいても、家事は妻に偏る図1 妻のほうが稼いでいても、家事は妻に偏る
 上の図は、1日に行う家事全般の時間を、その家計の主な稼ぎ手かそうでないかによって比較しています。ゲイやレズビアンの同性カップルでは、稼ぎ手の家事時間が短く、稼いでいないほうが家事を行うという役割分担が見られました。これに対し、異性カップルでは、妻のほうが稼いでいても家事はなお妻に偏ったままでした

「夫が無職」でも、家事は妻に偏る

 ここまで読んで、「いやいや、女性は出産や授乳があるんだから偏るのは仕方ないじゃないか」と思う人もいるかもしれません。しかし、この研究では、そのような生物学的な違いが原因であるという考え方は否定されています。

 下の図は、家事から育児の時間を除いたものですが、傾向はまったく変わりませんでした。妻への負担の偏りは、育児ではなく、掃除・洗濯・料理などによって生じているのです。
 研究チームが分析を進めると、妻の賃金が夫の2~4倍であっても、夫の家事時間は変わらないことがわかりました。さらに酷いことに、夫が無職になって妻だけが働いているときでさえ、夫は家事時間をほとんど増やさず、自分の余暇の時間を大幅に増やす傾向が確認されました

 夫が無職になっても、夫は家事をやらずに余暇の時間を増やす傾向があるという衝撃の結果です。

 さらに研究では、結婚や離婚の前後で家事時間がどう変化するのかを明らかにしています。

 図2を見てください。上の図は、男女が結婚すると女性の家事時間は一気に増え、男性の家事時間は減ることを示しています。
図2 離婚すると女性は家事から解放される図2 離婚すると女性は家事から解放される
 一方、下の図からは、離婚するとそのパターンが反転し、女性の家事時間が減り、男性の家事時間が増えることがわかります。つまり、結婚した途端に「妻」役に家事が押しつけられる構造があるのです。
 ラフォーチュン教授らは、妻に家庭の負担が偏る原因は、「女性が家事をするべきだ」という「ジェンダーロール(性役割)」に関する固定観念だと結論づけています。たとえ妻のほうが稼いでいたとしても、家事をするつもりがない夫に問題があったのです。

 なんと、要は男性の意識の問題だったのです。これでは、女性にとっての結婚のメリットがほとんどないも同然でしょう。男性の意識が変わらなければ、婚姻率や出生率の低下を食い止めるのは難しそうです。


*1 Goldin, C. (2014). A grand gender convergence: Its last chapter. American Economic Review, 104(4), 1091-1119. https://doi.org/10.1257/aer.104.4.1091
*2 Hancock, K., Lafortune, J., & Low, C. (2025). Winning the bread and baking it too: Gendered frictions in the allocation of home production (Working Paper No. 33393). National Bureau of Economic Research. https://doi.org/10.3386/w33393