人生は永遠には続かない。では、私たちは「限られた時間」をどう生きるべきか。17歳で命にかかわる病気を経験し、「人生の意味」を求めて世界中の人々に1000通以上の手紙を送ったジェームズ・ベイリー氏。その答えをまとめた『人生の意味――世界のあらゆる一流に教えてもらった105の答え』には、死の淵を経験した人や人生の頂点を極めた人たちの言葉も収められている。彼らの言葉から見えてきた、死ぬ前に後悔しないために知っておくべきこととは。(構成:田中裕子、写真:山口真由子)
ジェームズ・ベイリー氏
「有限の人生」だからこそ価値がある
――日本の主な宗教である仏教には、すべてのものは移ろい、永遠には続かないとする「無常」の考え方があります。「有限だからこそ人生には意味がある」という考え方について、どのように感じますか。
ジェームズ・ベイリー氏(以下、ベイリー):その考え方は、私自身の経験からもよく理解できます。私は17歳のときに不整脈と診断され、2度の手術を受けました。それまではスポーツが好きな、ごく普通の健康なティーンエージャーだったのに、命を落とす可能性のある病気を抱えていると突然告げられたのです。この衝撃的な経験をしたことは、私の人生に大きな影響を与えました。
病気は私にとって災いであると同時に、ある意味では恵みでもあったと思います。人生を最大限に生きることの大切さを強く実感するきっかけになったからです。命を「永遠に続かないもの」として捉え、今あるものに深く感謝できるようになった。
それにもし1000年生きられるとしたら、人生はきっと退屈なものになるでしょう。限りがあり、はかないからこそ、人生には意味があるのです。
命を落としかけた経験を持つ人たちから届いた手紙を読むと、彼らがとりわけ「人生を楽しむこと」の大切さを強調しているのがわかります。その中でも、私が大切にしているメッセージの一つがデイヴィッド・スミスのものです。
彼はイギリスのアスリートで、パラリンピックの金メダリストです。14年間のがん闘病と7度の脊髄手術を乗り越えたサバイバーですが、四肢麻痺で手紙を書くことが難しいため、電話で話を聞きました。その答えはとても力強いものでした。
「退職してから人生を楽しもう」はダメ
ベイリー:彼が言うには、金メダルを獲得したことは自分にとって大きな意味があったものの、他人にとってはそうではなく、驚くほどすぐに忘れ去られることを思い知ったそうです。「だからエゴに駆り立てられて、外部から得られる評価や称賛のためだけに何かをするのは、危険なことだ」と彼は語ります。
そして、今の自分にとって最も安らぎと充足を覚えるのは、日の出と日の入りを見ることだと語っていました。「スキーの超難関コースを滑り降りなくても、ただ起きてコーヒーを味わうだけでうれしいんです」と。
終わることや失われることに注目するのではなく、今この瞬間を生き、呼吸していることそのものを感じる。それこそが人生の意味だと言えると思います。
――40代、50代のビジネスパーソンの中にはミッドライフ・クライシス、いわゆる「中年の危機」に直面している人も少なくありません。「今を楽しむこと」が難しくなっている人たちに、アドバイスをお願いします。
ベイリー:先輩たちにアドバイスするのは気が引けるのですが、何歳であっても、大切なのは人生の意味や目的を探すことを先延ばしにしないことだと思います。今日この瞬間から、自分の人生の意味を考え始めてください。
また、「退職するまでの20年間を乗り切って、その後に人生を楽しもう」などとは考えないほうがいいでしょう。そうした考えは人生の終盤に、大きな後悔をもたらします。
自分自身と向き合い、何をしているときに心が躍るのかを見つめる。そこから始めることで活力を取り戻し、日々を充実させ、後悔の少ない人生を送れるのではないでしょうか。








