なぜアメリカでは、大統領、議会、最高裁がそれぞれ大きな力を持っているのか。その答えをたどると、約240年前につくられた「アメリカ合衆国憲法」に行き着く。建国の父たちが激論と妥協の末につくった国のルールを『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのアメリカ史』から紹介する。(ダイヤモンド社書籍編集局)
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憲法制定会議
1787年5月、フィラデルフィアに州の代表が集まり、憲法制定会議が開かれた。ジョージ=ワシントンが議長に選出され、アメリカ連合規約(編注:独立後の13州による連合政府の基本ルール)を修正すべきか、もしくは廃止すべきか、議論がなされた。
会議を混同しないように
●大陸会議
独立宣言に署名
●連合会議
アメリカ連合規約によって設立
●憲法制定会議
アメリカ連合規約を改正するために開催され、最終的にまったく新しい憲法を制定
大いなる妥協
憲法制定会議では、連邦議会の構成について意見が分かれた。二院制議会(議院をふたつ設け、各州の人口に基づいて議員数を決める、ヴァージニア案)にすべきか、それとも一院制議会(議院はひとつで、各州の議員数を同じにする、ニュージャージー案)にすべきか。人口の多い州はヴァージニア案を支持し、ニュージャージーのように小さな州は、議員数が人口に左右されるべきでないと主張した。コネティカットのロジャー=シャーマンが、コネティカット妥協案(大いなる妥協)を提案し、これが現在の二院制連邦議会のもとになる。つまり、上院は各州の議員数を平等とし、下院は各州の人口に基づいて議員数が決まることになったのだ。
奴隷は人として認められるべきか
多くの奴隷を抱える南部の州は、議員数の決め手となる人口に、奴隷も含まれる制度を望んでいた。ただし、奴隷が課税の対象になるのは避けたいと思っていた。奴隷が比較的少ない北部の州は、奴隷を財産とみなすなら、人口に含めず、課税対象にすべきだと主張した。代表団は5分の3妥協と呼ばれる妥協案を示し、課税と議席配分の両方で、奴隷ひとりを自由人の5分の3として数えることにした。
代表団のなかには、自由と平等という理念に基づいて建国された国に、奴隷制があるのはおかしいという意見もあった。この時点で、ジョージア、ノースカロライナ、サウスカロライナ以外の州では、奴隷貿易はすでに禁止されていた。
奴隷制によって富を築いてきた南部の州にとっては、受け入れられないことだった。ジョージアとサウスカロライナは、奴隷を禁止するなら連邦から離脱すると脅した。そこで代表団は、1808年までは、奴隷貿易の制限や廃止を認めないとする奴隷貿易妥協案を示し、これを解決した。どうすべきか南北で合意に達することができなかったため、結論を先延ばしにしたのだ。
奴隷の輸入について大勢の人々が賛否を唱え、結論を出せない状況は、憲法を可決し、新政府を樹立するプロセスを遅らせる原因になっていた。
憲法
1787年9月17日、フィラデルフィアに集まった55人の代表のうち、39人が憲法に署名した。ただし、憲法を発効するには、まだ批准の手続きが残っていた。ヴァージニアのジョージ=メイソンなど、署名を拒んだ代表は、市民の権利を正式に要約した条項が必要だと考えていた。建国の父たちは、憲法が修正条項によって変更され、継続的に改正できる、生きた文書となることを想定していた。内容が完ぺきじゃないことはわかっていたけれど、新しい政府を一刻も早く立ち上げ、運営する必要があると考えていたのだ。
連邦派と反連邦派
憲法の批准を推進する人々は、連邦主義者と名乗り、『ザ=フェデラリスト』という連作論文を発表して意見を広めた。「パブリアス」という偽名で出版されたこの論文は、アレグザンダー=ハミルトン、ジェームズ=マディソン、ジョン=ジェイが書いたもので、憲法は専制政治から国民を守るものだと主張した。反連邦主義者は、憲法によって連邦政府に権力が集中しすぎることを心配した。
憲法の批准
憲法を発効するには、9つの州が批准するだけでよかった。起草者たちはすでに、連合規約から離脱することを決めていたので、全州一致の条件を守る必要はなかった。
1787年12月、デラウェアが最初に批准した。1788年6月には、ニューハンプシャーが9番目に批准し、新政府が承認された。ヴァージニアとニューヨークという、規模と影響力が特に大きな州は、まだ批准していなかった。ジェームズ=マディソンは、憲法は書面どおりに承認されなければならない、と主張した。批准の途中で変更を認めれば、州ごとに異なる内容の憲法を承認することになってしまうからだ。それでも、ヴァージニアが批准し、ほどなくしてニューヨークも続いた。2年後の1790年5月、ロードアイランドが最後に批准した。1791年12月には、憲法の最初の修正条項10条である権利章典が批准された。















