
虎太郎、戦地へ――
お別れに、りんと虎太郎が握手する。
ここでも「行ってきます」「行ってらっしゃい」の挨拶が交わされる。
虎太郎の手にはりんへの未練が感じられる、ような気がする。手に感情をにじませる小林虎之介の名演。戦う仕事ではないにしても虎太郎の身が心配だ。
一方「手柄なんか立てようとせず」と考える人もいる。
平蔵(太田光)だ。
平蔵は直美に、命を助ける看護婦と戦をする軍人の夫婦は対極だとおもしろがる。直美は対極ではなく「似たもの同士なのかもしれません」と答える。
ここでようやく、直美がなぜ吾郎を伴侶に選んだのかわかるようなことが語られた。
お互い、生きるために看護婦や軍人になった。夢をもって選んだ仕事ではないところが共通だと直美は言う。
筆者は、ひねくれ者の直美は自分と正反対のまっすぐな吾郎が楽だったのかなと想像していた。それもたぶん少しはあるとは思うが、直美はやっぱり自分と似た、行き場所がない人に共感を覚えるようだ。寛太(藤原季節)もそうだし。
吾郎は孤児ではないが、三男で家を継がないから居場所を自分で作らないとならなかったのだ。
そんな直美に平蔵は助言。
「生き残るんだったら、手柄なんか立てようとせず、じっとしてることが一番だ。死んじまったら意味もねえ」
彼がなんでそんなことを言うのかと思えば、戊辰戦争の生き残りだった。背中の傷が、戦争の過酷さを物語っている。
「平蔵さんもお酒を控えてもっと生き残ってください」と直美。
平蔵は天井から吊るした縄を持って立とうと努力しているが、まだ難しそう。
「手柄なんか立てようとせず」、この言葉を虎太郎に聞かせてあげたい。
虎太郎は、死をもおそれず、自分の可能性に夢中になっている。実際に戦争を経験した平蔵は、何よりも命が大事と痛感したのだろう。
上を目指して頑張るほど、まず自分が生き残ることを忘れないようにしたい。仕事も同じだ。
直美は帰宅し、吾郎の軍服をたたむ。今日も料理は吾郎が担当だ。
『埴生の宿』を鼻歌で歌いながら、牛肉と馬鈴薯の煮付けを作っている。「いいですね〜」と直美のこの言い方は、母・文(内田慈)の言い方に似ている。
出征したら炊事担当だといいなという吾郎。
「やっぱり好きじゃない、軍人は。お国のためとかどうでもいい。吾郎さんさえ…」とさすがに軍人の妻として言ってはいけなさそうなことを言ってしまう直美。「吾郎さんのご飯ず〜っと食べたいな〜」と言い直した。でもこれは素直なすてきな願いだ。







