タクシー配車アプリ「GO」を運営するGO株式会社が、2026年6月にグロース上場しました。その後Waymoと日本交通と3社で自動運転タクシーの運行を目指すことが発表されました。ではそもそも、GO株式会社はどのようなビジネスモデルなのでしょうか。今回は書籍『サンキー図で「お金の流れ」が1秒でわかる 見るだけ決算書』に登場するサンキー図を使い、GOと国内大手・第一交通産業の決算を比較してみましょう。
タクシー配車アプリ「GO」。決算は?
2026年6月、タクシー配車アプリ「GO」を運営するGO株式会社(以下、GO)が東証グロース市場に上場しました。
利用者とタクシー会社をつなぐプラットフォーマーのGOは、実際に車両を運行する会社と比べ、決算にどのような違いが表れるのでしょうか?
今回は、GOと、国内大手のタクシー会社である第一交通産業の決算を比較していきます。同社はグループで約8,000台の車両を保有し、全国34都道府県で事業を展開しています。
まずPLで稼ぐ力を比較し、その後、BSから両社の財務構造を見ていきましょう。
売上高は約3分の1でも、営業利益は約2倍
GO2026年5月期 PL 第一交通産業 2026年3月期 PL
GOの売上高は約414億円、営業利益は約70億円、営業利益率は17.0%です。一方、第一交通産業の売上高は約1,125億円、営業利益は約36億円、営業利益率は3.2%です。
第一交通産業の売上規模はGOの約2.7倍ですが、営業利益ではGOが逆転し、営業利益率では5倍以上の差をつけています。
プラットフォーマーであるGOの方が利益率は高い。もしかすると「やっぱりそうか」と感じる結果かもしれません。
しかし、予想通りだからといって、比較する意味がないわけではありません。感覚的な予想を数字で確かめることで、さらなる分析や意思決定の材料として活かせるようになるのです。
では、PLの違いは財務状況にも表れているのでしょうか。続いてBSを見てみましょう。
現金45.2%と有形固定資産43.4%
まずは、BSサンキー図の左側から、集めた資金を何に投じているのかを見ていきましょう。2社ともに、資産の4割強を1つの項目が占めています。ところが、その項目はまったく異なります。
GO2026年5月期 BS 第一交通産業 2026年3月期 BS
GOで最も大きいのは現金及び預金の約346億円、第一交通産業で最も大きいのは有形固定資産の約838億円です。
同じ「資産の4割強」でも、片方は現金、もう片方は車両や土地・建物です。自社で大量の車両を持たずに配車を仲介するGOと、自社の資産を使ってタクシー業などを営む第一交通産業。事業の性質の違いが、資産構成にそのまま表れています。
自己資本比率はともに中央値以下、負債の中身は大きく異なる
(2社のBSサンキー図を再掲)
続いて、BSサンキー図の右側から、資金をどのように調達しているのかを見ていきましょう。まず、2社とも赤色の帯が目立つため、資金の調達先は負債メインであることがわかります。
また、中長期的な財務安全性を示す自己資本比率は、GOが36.4%、第一交通産業が24.0%であり、上場企業の中央値55.9%をともに下回っています。指標だけを見れば、両社は「負債の比重が大きい会社」という同じような見え方になります。ところが、負債の中身はまったく違います。
まず、第一交通産業の負債の大半を占めるのが長期借入金の約822億円です。短期借入金の約370億円と合わせると、借入金だけで約1,191億円にのぼります。借入金は利息を伴うため、金利負担が利益を圧迫しやすい構造です。
一方、GOで最も太い帯はその他流動負債の約439億円で、総資産の57.5%を占めます。借入金は約6億円しかないため、借入金に伴う利息負担は相対的に小さいでしょう。
ではGOの「その他流動負債」439億円とは何でしょうか。決算書で確認すると、その大半を占めるのは未払金の約400億円です。
GOは、利用者が支払った運賃をタクシー会社に代わって受け取り、後日タクシー会社へ支払います。この「受け取ったが、まだ渡していないお金」が未払金として積み上がっているのです。
つまり、GOの負債の大部分は銀行などから借りたお金ではなく、タクシー会社に渡すために一時的に預かっているお金です。通常、支払期日の超過などのトラブルがなければ、借入金のような利息負担はありません。第一交通産業と比べると、利益を残しやすい財務状況だと言えます。
まとめ
今回は、タクシー業界からGOと第一交通産業のPL・BSを比較しました。
・資産構成:GOは現預金、第一交通産業は有形固定資産が多い
・資金調達:自己資本比率は両社とも低いが、負債の中身が大きく異なる
第一交通産業は借入金が負債の中心である一方、GOは事業上生じた未払金が負債の中心です。
財務指標だけでは、こうした資産や負債の中身までは見えません。サンキー図で全体を捉え、目立つ項目は決算書で内訳を確かめることで、企業の特徴をより高い解像度で捉えることができます。






