例えば、厦門大学の「両岸都市発展研究院」は、台湾統一後の社会秩序移行を見据えた具体的な制度接収構想を提案している。その中核にあるのが、「中央台湾工作委員会」の設置と、「台湾統治実験区」の創設である。

 前者は、法制度や通貨、教育、軍事制度、インフラ、人事評価などを対象に、大陸側の制度との整合を図る「影の統治機構」であり、実際に台湾進出後即時に政権を引き継げるよう、組織構成や政策実行計画の詳細が設計されている。

 後者の「台湾統治実験区」は、福建省に設置される予定の統治シミュレーション区域であり、台湾の行政制度・教育体系・土地制度・メディア対応などをリアルに再現し、将来の接収後の行政モデルを事前に実地で試行・検証するための空間である。

台湾の元軍人や教師を招いて
共産党の幹部候補生を指導させる

 この実験区では、伝統的漢字の扱いや教育カリキュラム、通貨制度、選挙制度、さらには不動産制度や教師採用制度の移行に至るまで、あらゆる社会システムの細部にわたる政策実験が想定されている。

 加えて、台湾からリタイアした軍人・公務員・教師らを招聘し、彼らが中国共産党の幹部候補生に訓練を施し、政策立案へのフィードバックを得る枠組みも構想されている。

 これは、実際に台湾を知る人物からリアルを学びたいということもあるが、裏の狙いがある。

 台湾出身者が幹部候補生に指導していることから、台湾社会に「自ら制度設計に関与している」という錯覚を与え、統治の正当性を事前に演出するという狙いだ。

 このように、台湾の制度変質は、偶発的な弾圧や混乱の産物ではない。それはむしろ、香港の混乱から学習した中国当局が、徹底的に制度的・心理的準備を積み重ねたうえで実施しようとしている、「統一のその先」への計画的・段階的な制度再編なのである。

 台湾にとっては、統一後、逃れることのできない魔の手である。

TSMCを中国が支配すれば
世界の半導体はどうなるのか

 台湾の中国統一は、台湾、ないしアジア太平洋地域にとどまらず、世界秩序そのものに衝撃を与える地政学的地殻変動である。

 統一の方法が平和的なものであれ武力によるものであれ、国家主権・経済安全保障・イデオロギーの対立といったグローバルな課題を一挙に顕在化させることになる。

 台湾が統一された場合、最も即時的かつ深刻な影響を受けるのは半導体産業である。現在、世界の半導体製造の約70%、特に先端半導体製造は定義によるものの約7割から9割が台湾で行われている。