とりわけ、電子機器のデータ処理において中心的な役割を果たすロジックチップにおいて、世界最先端の製造能力を有するTSMCの帰属と運用が国際的な懸念の的となる。

 中国がTSMCを直接支配下に置けば、米国や日本、EUの技術安全保障は根底から揺らぐ。加えて、同社が持つ製造ノウハウやサプライヤーとの関係、さらには先端半導体を製造するために必要な極端紫外線(EUV)露光装置などを押さえた中国により、西側の技術・部品に対する制裁や禁輸が連鎖的に発動される可能性が高い。つまり、世界の半導体産業は締め出しを食らう。

 この過程で、世界的なサプライチェーンの再編が急加速する。インド、ベトナム、メキシコなどが代替の製造拠点として浮上し、中国依存からの脱却が現実の選択肢として進展するが、その実行には多大なコストと時間を要し、実現するまで世界経済は混乱する。

 なお、日本も半導体(集積回路)輸入のうち、約6割が台湾からであり、台湾からの輸入が止まれば、日本の製造業を牽引する電機・情報通信機器・生産機械・電子部品・自動車産業等は大打撃を受けることとなる。

台湾から避難する人々を
日本はどう受け入れるのか

 現在、国の主導の下、台湾有事の際の南西諸島からの避難民の受け入れ計画の策定が自治体の協力を得て進んでいる。例えば、大分県は、石垣市から1万1000人の避難民を受け入れる計画を検討している。

 しかし、これらの避難計画には、台湾からの避難民(難民)をどのように扱うのか、という観点が抜け落ちている。有事には、日本国内での移動だけでなく、台湾から日本への移動もあるはずなのに。

 中国の手に陥落した台湾からは、それを望まない台湾市民が亡命を求めてくるだろう。しかし、そもそも台湾が国ではないなかで、それを認めるのか。極めて政治的かつ高度な判断が求められる。仮に受け入れる方向性なのだとすれば、政府内の検討のみではなく、広く自治体や国民の意見を聴取すべき論点であろう。

『自滅する米中』書影自滅する米中』(佐々木れな、SBクリエイティブ)

 また台湾避難民の受け入れがはらむ問題は、政治的・人道的なものだけではない。台湾はあらゆる産業で重要な半導体産業において特別な地位を有する。

 当然、半導体産業における世界一の人材の宝庫が台湾である。現在台湾にいるこれらの高度な研究者・技術者・熟練労働者をどうするのか。経済安全保障・産業政策の観点から、統一後の「台湾人材」の囲い込みについても真剣に検討しなければならないだろう。

 台湾からの避難民を日本に受け入れるのか、また受け入れるとして永住権等を与えるのか。日本国民全体が「自分事」として向き合わないとならない意思決定だ。

 あなたは、どう考えるだろうか。