「脳にいい食べ物」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。青魚、ナッツ、サプリメント……。しかし、もっと身近で、日本人に不足しがちな「ある栄養素」が重要だという。元オックスフォード大の医学研究者であり、「糖と脳」の専門家として知られる医師・下村健寿氏の著書『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』をもとに、いつまでも「脳が老けない人」が食べているものを紹介する。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

いつまでも「脳が老けない人」が食べているもの・ベスト1Photo: Adobe Stock

本当に「脳のため」になる食べ物とは?

いつまでも頭を若々しく保つために、何を食べればいいのか。

青魚を食べる。
ナッツを食べる。
DHAやEPAなどのサプリメントを飲む。

「物忘れ」が気になりはじめると、こうした食品に目が向きがちだ。

しかし、元オックスフォード大の医学研究者であり、「糖と脳」の専門家として知られる医師・下村健寿氏は、著書『糖毒脳』で、「これさえ食べれば認知症を防げる」という万能な食品はないと指摘している。

そのうえで、下村氏が「積極的に摂る価値がある」と勧めている栄養素が一つある。

1つだけ、確実におすすめできるものがあります。日本人に本当に不足している栄養素である「食物繊維」を含む食べ物です。
(下村健寿著『糖毒脳』より)

なぜ「食物繊維」が脳にいいのか

食物繊維というと、「便秘を防ぐためのもの」というイメージを持っている人も多いかもしれない。

しかし、その働きはそれだけではない。

食物繊維が腸内細菌の力によって発酵されると、酪酸などの短鎖脂肪酸が生成されます。この短鎖脂肪酸は脳の中に入り込むことができ、記憶を司る海馬において神経細胞の新生を促すことがわかっています。
(下村健寿著『糖毒脳』より)

つまり食物繊維は、認知症によって最初に神経細胞が失われる場所に新しい神経細胞を生み出してくれる可能性があるのだ。

実際、アメリカで行われた疫学調査では、食物繊維の摂取が足りていない人はアルツハイマー病をはじめとする認知症を発症する危険性が確実に高いことも報告されている。

いつまでも「脳が老けない人」が食べているもの

食物繊維のなかでもとくに重要なのが、海藻類などに多く含まれる「水溶性食物繊維」である。

その効果について、下村氏は以下の研究を紹介している。

筑波大学が3000人以上を対象に20年以上をかけて行った調査によると、食物繊維のなかでもワカメや昆布などの海藻類や、大豆、こんにゃくなどに多く含まれている水溶性食物繊維を多く食べていた人は、そうでない人と比べて認知症になるリスクが4分の3まで低下していました。
(下村健寿著『糖毒脳』より)

高価な健康食品を買う必要はない。

水溶性食物繊維が含まれている、わかめや昆布などの海藻類。

ほかにも、大豆など、普段の食卓に並ぶ身近な食品から食物繊維を摂ることはできる。

認知症予防というと、つい「特別なものを食べなければ」と考えてしまう。

しかし、毎日の食事のなかで食物繊維を十分に摂るだけで、そのリスクを下げることができるのだ。

下村健寿(しもむら・けんじゅ)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。