京セラ創業者の稲盛和夫氏京セラ創業者の稲盛和夫氏 Photo:JIJI

「部下に任せるより、自分でやった方が早い」――現場の管理職が抱きがちな悩みである。京セラを創業し、独自の「アメーバ経営」で組織を育てた稲盛和夫は、2016年の盛和塾世界大会で、人材育成をめぐる“正論”に手厳しい異論を唱えた。では、任せることと育てることを、稲盛はどう両立させていたのか。研究結果とともに、その真意を読み解く。(イトモス研究所所長 小倉健一)

「部下に任せるべき」の正論と
「自分でやった方が早い」現実

 部下に任せるより、自分でやった方が早い――管理職になった人なら、一度はそう思ったことがあるはずだ。やり方を説明し、途中で様子を見て、間違っていれば直し、最後は自分で仕上げる。そこまで手をかけるなら、最初から自分でやった方が早かった。そんな経験は珍しくない。

 ところが経営書を開くと、逆のことが書いてあったりする。

「部下に任せなければ人は育たない」「権限を渡せ」「失敗から学ばせろ」

 理屈は分かる。だが現場には、今日中に終わらせなければならない仕事がある。売り上げも納期も待ってくれない。しかも、部下のミスの責任を取るのは結局、上司である自分だ。任せたからといって、自分の仕事が減るわけでもない。むしろ確認やフォローに時間を取られることもある。

 それでも、部下を育てることもまた、管理職に課された仕事の一つだ。「任せるべき」という正論と「自分でやった方が早い」という現実。その板挟みに悩む管理職は多い。

 このギャップに対して、京セラ創業者の稲盛和夫ははっきりと持論を述べている。

 2016年7月14日、盛和塾第24回世界大会。稲盛は経営コンサルタントからよく聞く助言を取り上げた。それは「社長のワンマン経営では人は育ちません。人を育てるためにはもっと部下に仕事を任せるべきです」というものだ。

 この助言に対する稲盛の考えは、かなり手厳しいものだった。