
「出世もしなくていい。私が働く」
「吾郎さんそんなに優しくて戦える?怖くないの?何なら私のほうがずっと戦えるよ」。そう言う直美が健気。
吾郎は、お国のため、直美や子どものためなら戦えると言う。
ここで直美の本音が出る。
「吾郎さんがひとりにしないって言ってくれたから結婚して、吾郎さんとだったら私でも母親にって…」
直美はひとりになることが心底不安なのだ。
最近すっかり出てこなくなった寛太(藤原季節)もお似合いな感じではあったが、彼女が決して彼に恋をしなかったのは、彼がすぐどこかにいってしまいそうな気配を漂わせているからだろう。
確かに、吾郎は誠実で直美一筋。家庭第一の夫になりそうだ。実際、そうなっている。軍人でさえなければ。戦争さえ始まらなければ。まったく間が悪かった。
直美はある意味、自分本位にも聞こえる本音を吐露してしまい、「ごめんごめん」と吾郎の気持ちを慮る。ここが、直美のいいところ。
謝りながら泣いてしまう直美を抱きしめる吾郎。
直美と吾郎のターンはオーソドックスで、おいしいお水のようにすんなり喉を通る。
「名前…一緒に考えよう」
「帰ってこなかったら許さないから、すっごく怒るから」
「手柄なんか一つもいらないから、早く戻ってきて」「ご飯作って」「出世もしなくていい。私が働く」
このへんのセリフも直美の素直な気持ちが痛いほどわかる。
「出世もしなくていい。私が働く」は、平蔵の「生き残るんだったら、手柄なんか立てようとせず、じっとしてることが一番だ。死んじまったら意味もねえ」が効いていると思う。
このセリフから感じるのは、女性が社会進出することが、男性を戦争に駆り立てることへの抑止にもなるのではないかということだ。初期の女性の社会進出はそんな女性の祈りもこめられていたのではないか。
「おーい。お前のお母さん、頼りになるなあ」と吾郎はおなかの子に語りかける。
そこで、彼は「明」という名前を思いつく。
「私。子どもの名前つけられたって」
ここで、直美はようやくようやく、みなしごの呪いから解き放たれたのだ。
だが、運命は意地悪で。年が明けて3月、直美のおなかがだいぶ大きくなってきた頃、吾郎は……。
出征前、吾郎は一ノ瀬家に直美を預ける。
「一人にするのは心配だったもので」
強気の直美が本当はとってもひとりが嫌いであることを、吾郎は理解している。ほんとうに最高の夫。りんも直美をわかっているから「一人には決してしません。小川さんがお帰りになるまで責任持ってお預かりいたします」と受け止める。
ここまでいい話になっていると、すべてがフラグにしか見えず、いやな予感しかしない。
*読売新聞オンライン 2021年8月15日 「原爆・路上生活・差別、美輪明宏さん「苦しい時こそルンルンと口ずさむ」…STOP自殺 #しんどい君へ」
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/stop01/interview/20210813-OYT1T50225/








