部下の相談、会議、チャット、他部署との調整――。中間管理職になると、自分の仕事以外の対応に追われ、気づけば夕方にはもう余力が残っていない。問題は、単純な仕事量だけではない。細かな中断や判断の積み重ねが、知らないうちに「体力」を削っている。夕方まで仕事の質を保つために、中間管理職が身につけたい「体力の運用」を『体力がすべて』から紹介する。

「管理職になってから、疲れる…」仕事のパフォーマンスを変える「体力の運用法」Photo: Adobe Stock

中間管理職が身に付けたい「体力の運用」

【悩みの例】
 メーカーで営業部門のマネジャーをしています。自身の数値目標を追いながら、5人の部下の育成も任されています。席にいると、部下からの相談や確認のメール、チャットが頻繁に入り、午前中は会議やトラブル対応に追われます。
 朝は元気に出社するのですが、夕方になって、いざ自分の企画や重要な判断に向き合おうとすると、なかなか集中できず、企画や提案がうまくまとまりません。十分に検討できたか不安が残り、重要な判断を先送りにしてしまう日も増えました。
 勤務時間はプレーヤーの頃と変わらないはずなのに、どうしてこんなに疲れるのか。どうすれば夕方まで、自分の仕事のパフォーマンスを保てるのか悩んでいます。

無自覚な「中断の負荷」と「考える負荷」が余力を削る

 中間管理職は、部下への対応、承認、優先順位づけ、他部署との調整など、予定外の対応や細かな判断を求められる場面が多い。

 夕方に集中しにくくなる背景には、単純な仕事量の多さだけでなく、仕事が何度も中断され、そのたびに頭を切り替える負荷が積み重なることもある。実際、中断が多いほど負担感は強まりやすい(※1)。

 仕事が中断されると、元の作業に戻るたびに、「どこまで進んでいたか」「次に何をするか」を思い出し、流れを組み立て直す必要がある。こうした負担は、仕事が複雑なほど大きくなる(※2)。

 さらに、終わっていない仕事があると、それが気がかりとなり、次の仕事にも集中しにくくなる。そこに、確認、返答、調整といった小さな判断が重なると、時間だけでなく、考えるための余力も少しずつ削られていく。中断が多い日は消耗感が増し、仕事への満足感も下がる傾向がある(※3)。

 そのため、夕方にようやく企画や重要な判断にあてる時間を取れても、考えがまとまりにくいのは不自然ではない。その時点で、すでに考えるための余力がかなり使われているのだ。

体力の処方箋

 夕方まで余力を残すには、1日の流れを見直したい。意識したい点は3つある。第1に、中断してもすぐに戻れる形をつくること。第2に、重要な判断は余力が残っている時間に前倒しすること。第3に、予定が詰まっている日ほど短い休憩を挟み、余力の減り方を緩やかにすることだ。

①中断を減らし、戻る負担を軽くする

 部下への対応や、頻繁に届くメールやチャットをなくすのは難しい。そこで大切になるのは、中断の回数をできるだけ減らすことと、中断した後に仕事へ戻りやすくしておくことだ。

 作業を中断する前には、「次にやること」を1行だけ短く書き残しておく。たとえば、「提案書3枚目の結論を書く」「A社とB社の条件差を確認する」といった1文でよい。これだけでも、再開するときに考えなおす負担は軽くなる。

 終わっていない作業は、頭の中だけで抱え込まず、メモやタスク管理ツールに出しておく。頭の外に出すだけでも気がかりが減り、余力を残しやすい。

 メールやチャットも、すべてにその場で反応しようとせず、時間を決めてまとめて処理する。仕事が細かく分断される回数が減るだけでも、1日の後半は崩れにくくなる。

②重要な判断は余力が残っているうちに行う

 脳は判断を重ねるほど疲れやすい。余力が減ってくると、複雑なことを整理して考えるよりも、現状維持や手早く済む選択に流れやすくなる。

 そのため、企画立案や意思決定のような仕事は、余力が減った夕方にまわすほど、まとまりにくくなる。こうした仕事は、日中の中断や判断で余力が削られる前、つまり朝一番や午前中など、余力がまだ残っている時間に置いたほうが進めやすい。

 また、強いストレスがかかった直後は、気持ちが前に出やすく、冷静に考える力も落ちやすい。重要な案件は、その場で急いで結論を出さず、少し時間を置いてから決めたほうが安全だ。

 軽い運動や短い休憩の後は、頭が冴えやすく、考える仕事にも取りかかりやすいことがある。そうした区切りを意識して取り入れるのもよい方法だ。

 夕方は、新しく考え始める時間というよりも、すでに考えた内容を見直したり、確認したり、仕上げたりする時間にまわしたほうが、仕事の質は落ちにくい。夕方に重要な仕事が残らないように、仕事の順番そのものも見直しておきたい。

③忙しいときこそ、意図的に小休止を挟む

 会議や調整、トラブル対応が続く日は、仕事量そのものだけでなく、切り替えの多さも余力を奪いやすい。そのため、予定が詰まる日ほど、意識して短い休憩を挟むことが大切になる。

 目安として、30~60分ほど続けて作業や対応をしたら、3~5分だけでも席を離れるとよい。立つ、歩く、水を飲む、肩を回す。それだけでも十分だ。こうした短い区切りを入れるだけでも、余力の減り方は変わってくる。

 休憩を入れずに対応を続けると、会議の後半や夕方になって、考えをまとめるための力が残りにくくなる。逆に、短い休憩を挟みながら進めると、1日の後半までもちこたえやすい。

 中間管理職の1日は、放っておくと途中で消耗しやすい。大切なのは、動き続けることではない。短い休憩を意識して挟みながら、1日の流れを整えることだ。

【注釈】
1. Rick VB, Brandl C, Mertens A, Nitsch V. Work interruptions of office workers: the influence of the complexity of primary work tasks on the perception of interruptions. Work. 2024;77(1):185-96.
2. Guo J, Chen T, Xie Z, Or CK. Effects of interventions to reduce the negative consequences of interruptions on task performance: a systematic review, meta-analysis, and narrative synthesis of laboratory studies. Appl Ergon. 2021 Nov;97:103506.
3. Pachler D, Kuonath A, Specht J, Kennecke S, Agthe M, Frey D. Workflow interruptions and employee work outcomes: the moderating role of polychronicity. J Occup Health Psychol. 2018 Jul;23(3):417-27.