世の中をあっと言わせる偉業を成し遂げた人は、どんなことを考えていたのか。サラリーマンでありながらサンダンス映画祭で日本映画史上初のグランプリを受賞し、『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』を上梓した長久允氏の思考を辿ります。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

脚本お金Photo: Adobe Stock

お金あつめをどうするか

 やりたいことがあるけれど、お金がない。

 仕事でもプライベートでも、資金集めは大切です。

 ただ、新しいことをするとなれば、潤沢な予算はないということも。

 そんなとき、無理だと諦める前に知っておいてほしいことがあります。

 映画監督/脚本家の長久允(ながひさまこと)さんは、32歳のときに自主制作で作った映画で、サンダンス映画祭のグランプリを受賞した人です。

 長久さんは、映画づくりにかかるお金についてこう語っています。

 映画は0円では作れません。『仲間で集まって~』などと、インディペンデント界隈ではたまに聞くけれど、それはいけませんよ。あなたのやりたいことに、みんなが付き合ってくれているわけですから、無償を強いてはならないと私は考えます。

 もし一度そういうありがたいことを言っていただいて助けてもらったとしても、それを当たり前にしてはいけません。絶対に、ギャラを払いましょう。弁当を用意しましょう。睡眠時間を確保しましょう。それが主宰、スタッフを集めた人の最低限の務めです。

 そして、主宰は、あなたなのです。あなたが作りたいことを、みんなが手伝ってくれているのです。お忘れなく。


――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p-178-179より

集め方その1:自腹

 その心構えを持ったうえで、具体的な資金調達方法についても率直に紹介しています。

 まずは、自腹で集める方法について。

 と、いうことで、お金を集めましょう。
 集め方は、大きく分けて3パターンあります。

①自腹
 お金を出す人が増えるということは、その人たちは「口を出す権利を持ってますよ」ということでもあります。
 つまり、自分のお金のみで完結させることが、一番誰にも邪魔をされないということなのです。巨匠の監督たちも結局ここに辿り着くことが多いです。伊丹十三監督とか。

 もし、あなたの実家がお金持ちならば、それはひとつの才能です。脛(すね)をたくさん齧(かじ)って、好きに映画を作ってください。

 もしくは10年働いて、貯めたお金で撮るのもいいでしょう。でも借金はダメです!
 何よりも、あなたの生活が最も大事です。睡眠と食事が疎かになってしまうなら、やってはなりません。もし今、手元にお金がないのなら、次の方法でお金集めをしてください。


――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p-179180より

集め方その2:賞金

 続いて、賞金です。

 実際に長久さんもこの方法で最初の映画を作りました。

 この世界にはたくさんの映画に関するコンペティションがあります。だいたい優勝すると賞金が出ます。賞金と言ったら語弊がありますね。正式に言うと、その「脚本」の映像化に対する制作費の支援をしてもらえることが多くあります。

 規模はさまざまです。一番大きなものは、完成した脚本を応募して、応募作の中で1位になった作品を、そのコンペの主催が全額出資してくれてそのまま制作できるものがあります。それが一番幸福ですね。(中略)

 その他のパターンでは、「脚本」ではなく、その映画の概要が書かれた「企画書」のコンペもあります。
 私はこのタイプのコンペ(MOON CINEMA PROJECTという名の若手映画監督支援のプロジェクト。現在は残念ながらコンペを休止中です)で優勝して、デビュー作『そうして私たちはプールに金魚を、』を撮ることができました。

 注意点は、そのコンペティションの主催者が権利を保有する点です。勝手にYouTubeに上げたり、上映することはできなくなりますが、相手も同じ人間ですから、ちゃんと目的を話し合って、筋を通せば、問題が起きることは少ないでしょう。

 ということで、「映画/コンペ」だとか「脚本/コンペ」だとかで検索してみてください。必ず何かしらあるはず。


――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p-180181より

集め方その3:クラウドファンディング

 そして3つめが、クラウドファンディングです。

 いわゆる「クラファン」というやつですね。
 クラウドファンディングとは、インターネットを通じて、不特定多数の人々から少額ずつの資金を調達する仕組みです。「ファンディング」というのは資金調達という意味なので、それのインターネット不特定多数バージョンととらえてください。

 「クラファン」はそれを運営するプラットフォームがあり(中略)、そこに登録することで、告知や資金調達システムを利用することができます。
 その代わりに、手数料が10~20パーセントほど取られます。100万円を調達できた場合は、手数料を引かれて80万円くらいが手元に入るとイメージしてください。

 また、資金を支援してくれた方に「リターン」と呼ばれる、何らかの返礼をすることが通例とされています。撮影の見学や、映像が完成した際の試写の権利などを付与する必要があるでしょう。
 その作品を資金調達段階から応援してくださる方がいる、つまりあなたの作品に味方が増えていく、という仕組みです。本当にありがたいことです。(中略)

「クラファン」で成功した有名な作品といえば、太平洋戦争中の広島を描いたアニメ作品『この世界の片隅に』ですね。この作品は、通常のやり方での資金調達が難航していましたが、「クラファン」によって3900万円もの追加資金を調達し、制作。結果的に興行収入25億円を超える大ヒット作品となりました。

 この例だけを見ると、ちょっと規模が大きすぎるように聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。大小さまざまなプロジェクトがありますので、検索してみてください。


――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p181-183より

 お金がないから諦めるのではなく、お金をどう集めるかを考える。そして大前提として、自分が主宰であることの意識を忘れない。

 その姿勢を持てる人の挑戦は、次につながっていくのでしょう。

 私は脚本だけでも満足はできています。でも、もしいろいろな、主に金銭的な都合がつくのなら、映像に残したい!
 もしあなたが脚本を書いて、「映像に残したい」と思ったのなら、やはり作るべきです。できれば、自分で監督をやってほしい。遠慮しないでほしい。

 なぜならば、あなたがイメージした世界は、他者が完全に理解することなどできないから。他者の解釈が過剰に入ってしまうことで、狙いの軸がズレるのを避けなければなりません。完全に狙いが共有できる監督の知り合いがいるなら別ですが、本音を言うと、そんな人はこの世にいない。ひとりもいないよ!

 さぁ、脚本を書いたあなたが、自分で映画を作ろう。


――『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』p177より