2016年、アメリカ政治に大きな転換点が訪れた。政治経験のない実業家ドナルド・トランプが、共和党の実力者たちを次々に破り、大統領選を制したのだ。既成政治への不満をすくい上げ、ツイッターを駆使して支持を広げたトランプ。その登場は、政策だけでなく、政治家の振る舞いや市民運動のあり方まで変えていった。なぜ彼はここまで支持を集め、アメリカ社会を揺さぶる存在になったのか。2016年から始まった激動の時代を『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのアメリカ史』から紹介する。

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2016年の選挙

 民主党と共和党の党派対立は2016年の選挙にもつれ込んだ。予備選挙では民主党、共和党ともに活発な動きがあった。共和党の実業家でリアリティ番組の司会者、そしてバーセリズム(出生地差別主義)の積極的な推進者ドナルド=トランプは、経験豊富な共和党のライバルたちを制した。ポピュリスト的なアプローチで、自分たちが置き去りにされたと感じる多くの有権者に訴えかけたのだった。

ポピュリスト。一般の人々の権利や力を守ると訴える政治家や活動家。

 民主党の予備選挙には、左派ポピュリスト候補者としてバーニー=サンダースが立候補し、政府はもっと国民のニーズに応える必要があると訴えかけた。サンダースはヒラリー=クリントンと激しく戦ったけれど、最終的にクリントンが勝利した。彼女はトランプと対峙する。

トランプ大統領

 トランプは政治のアウトサイダーの立場で選挙にのぞみ、既存の秩序を覆すと約束した。そして、従来の慣行にとらわれず、ソーシャルメディアを使って自分の考えを発信した。お気に入りのメディアはツイッターだった。政策決定を発表したり、だれかを解任したり、敵対者を批判するためにツイッターが多用された。トランプが大統領としてとった重要な行動には、次のようなものがある。

●2017年に減税および雇用法に署名した。アメリカ企業の国外の事業活動を1兆ドル規模でアメリカに取り戻すことを目指すとともに、児童税額控除を倍増した。

●宇宙でのアメリカの権益を守るため、軍の6番目の部門となる宇宙軍を設立した(ほかの5つは、陸軍、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊)。

●アメリカを世界最大の原油生産国にすべく、ヨーロッパへのエネルギー輸出の増加を交渉した。

●刑事司法制度の改革に取り組み、元受刑者が社会に復帰する手助けとして、ファースト=ステップ法を制定した。

●アメリカを環太平洋経済連携協定(TPP)パリ協定2016年のオバマの誓約を取り消した)から離脱させた。

●イスラエルのアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移し、エルサレムをイスラエルの首都として承認した。

 2019年、トランプは不適切な行動について非難に直面した。調査ののち、弾劾裁判がおこなわれた。2019年12月18日、民主党が主導する下院は、ウクライナ大統領との取引に関して、トランプに「権力の乱用と議会妨害」があったと弾劾訴追した。上院では、多数派の共和党の指導部は重要な文書の公開や証人の召喚を求めず、2020年2月5日の投票でトランプは放免され、大統領職にとどまった。

環境問題

 環境活動家たちは、近年特に深刻化しているハリケーンや山火事は、地球温暖化による危険の兆候だと警告する。

 2012年、ハリケーン=サンディがカリブ海の島々を壊滅させたのち、アメリカ東海岸に上陸した。影響は24の州におよび、なかでもニューヨーク市とニュージャージー州海岸は、とても大きな被害を受けた。

 2017年には、ひと月のうちに、次々とハリケーンに見舞われた。8月25日にハリケーン=ハービーがテキサス州を襲い、9月10日にはハリケーン=イルマがフロリダ州に上陸、そして9月20日にはハリケーン=マリアがプエルトリコの家々をなぎ倒した。

 2020年には、名前のついた熱帯暴風雨が観測史上最多の30に達した。あらかじめ用意されていたアルファベット順の人の名前では足りなくなり、ギリシア文字の名前も使われることになった。

社会活動家たちが動かす政治

 ソーシャルメディアは、人々を組織するのに効果的な道具として認知され、多くの市民が街頭や裁判所だけでなく、インターネットを使って意見を発信するようになった。