2010年代、アメリカ経済は回復し、株価や世帯収入も過去最高水準に達していた。だが、新型コロナの世界的流行がその空気を一変させる。混乱のなかで行われた2020年大統領選ではバイデンがトランプを破ったものの、敗北を認めない動きが広がり、ついには議会議事堂襲撃へ。過去200年以上続いてきた「平和な政権移行」は、なぜここまで揺らいだのか。アメリカを覆った分断の深まりを『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのアメリカ史』から紹介する。
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経済:景気後退、リバウンド、そしてパンデミック
2010年代、アメリカ経済は立ち直りつつあった。低賃金労働者のなかにも実質賃金が上がる人があり、人口統計で見ると、幅広い層で貧困率も低下していた。
新築戸建住宅の販売は、2018年から2019年にかけて10パーセント以上増加した。世帯収入の中央値は史上最高水準に達し、株式市場は2019年にダウ平均株価の最高値をつけた。ところが、2019年の最後の数カ月で、ウイルスがすべてを変えた。

コロナウイルスが最初に特定されたのは、50年以上も前のことだった。コロナウイルスは通常は咳や鼻水を引き起こす程度で、一般的な風邪の原因でもある。
しかし、2019年12月初頭、中国の武漢で、ひじょうに感染力が強く、重篤な呼吸器疾患を引き起こし、空気感染のリスクもある「新型」コロナウイルスの、ヒトからヒトへの感染が確認された。ウイルスは発見年によりCOVID-19と名づけられた。
2020年1月末、イタリアで最初の症例が確認され、3月中旬にはヨーロッパが大きな震源地となっていた。さらに3月末の時点では、アメリカはイタリアや中国よりも多くの感染が確認される状況になっていた。2020年3月11日、世界保健機関はCOVID-19を世界的なパンデミックであると宣言した。2020年が終わりに近づくにつれて、世界中で7000万人以上が感染し、190万人以上が死亡した。
世界的なパンデミックと戦うため、多くの国で企業や学校が閉鎖された。科学者たちがワクチンの研究開発を加速させるなか、経済活動は鈍化した。研究開発が猛スピードで進み、世界中の科学者たちは1年以内にウイルスの最悪の影響を抑える6つ以上のワクチンをつくりだした。
2020年の選挙
このパンデミックのさなか、ドナルド=トランプは再選を目指した。民主党では20人以上が指名争いに参加した。最終的には、オバマ政権下の副大統領だったジョセフ=R=バイデンが民主党の指名を獲得した。バイデンは副大統領候補として、インドとジャマイカからの移民の血筋で、大統領候補の指名をともに争ったカリフォルニア州のカマラ=ハリス上院議員を選んだ。
トランプは、経済の好調を背景に共和党支持層の人気を保ち、約7400万票を獲得した。しかし、トランプのパンデミック対応や党派的な姿勢は、無党派層の有権者の多くを不安にさせた。バイデンは、過去100年以上で最高の投票率を記録した選挙で、8000万票以上を獲得した。バイデンは700万票以上の差をつけて一般投票で勝利し、トランプが前回の選挙で獲得したのと同じ306対232の差で選挙人投票に勝利した。
この10年間の出来事は、有権者の政治的関心を高めたけれど、深い分断を招くものでもあった。
大統領選に重大な不正があったのではないかという虚偽情報や誤情報が広まったけれど、そのような証拠は示されていない。ドナルド=トランプは敗北を認めようとしなかった。政権の移行は平和的に進まず、それは過去200年以上を振り返っても初めてのことだった。
2021年1月6日、連邦議会が各州の選挙人の投票結果を認定するはずの日、多数のトランプ支持者たちが投票に不正があったと信じてアメリカ合衆国議会議事堂を襲撃し、議会による認定を阻止しようとした。最終的には州兵が到着して秩序を回復し、夜遅くに選挙結果は認定された。
その後、議会下院は、根拠もないまま選挙不正の主張を繰り返し、議事堂襲撃前に1月6日の暴徒たちと話をしていたトランプ前大統領に対して弾劾訴追をおこなった。2021年2月13日、57人の上院議員がトランプを有罪とし、43人が無罪とした。しかし、弾劾裁判の有罪判決に必要な3分の2には届かず、ドナルド=トランプは2度目の弾劾裁判という、過去に例のない状況で無罪となった。
バイデン政権における重要な出来事としては、2022年4月7日に民主党が多数派を占める上院が、彼の指名したケタンジ=ブラウン=ジャクソンを最高裁判所判事として承認したことが挙げられる。ジャクソン判事は、最高裁判所判事として初めての黒人女性となった。




