「競争に負けたのが負け犬じゃない、戦っている時点ですでに負け犬なんだよ」――『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』で山口周さんが引くのは、投資家ピーター・ティールの挑発的な言葉です。血みどろの競争を避け、自分だけの市場をつくる「ブルー・オーシャン戦略」。その鍵は、新しい価値の創出ではなく、既存の価値の「新しい組み合わせ」にあるといいます。一つひとつの能力は超一流でなくても、唯一無二の存在になれる理由を聞きました。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)

天才でなくても「成果を出し続ける人」がやっていることとは?Photo: Adobe Stock

新しい組み合わせで唯一無二の存在になれる

――「一流だといえるものがない」ことで悩んでいる人もいると思うのですが、山口さんは『人生の経営戦略』の中で、「独自の交差点を作る」ことで唯一無二の存在になれるとおっしゃっています。これについて詳しく教えてください。

山口周氏(以下、山口):ブルー・オーシャン戦略の話ですね。

ブルー・オーシャン戦略とは、競争が激しい市場=レッドオーシャンでの血みどろの戦いを避けて、競合には真似のできない独自の価値提案を行い、競争のない独自の市場=ブルー・オーシャンを創出することを目指す戦略です。

鍵となるのが「価値の新しい組み合わせ」です。

成功事例の筆頭がシルク・ドゥ・ソレイユで、それまでのサーカスが提供していたスリルとユーモアに、音楽性・芸術性・幻想性といった要素を「組み合わせる」ことで独自の世界観をつくりあげました。

これは「新しい価値」の組み合わせではなく、「既存の価値」の「新しい組み合わせ」でいいことに注意してください。

「独自の交差点をつくる」とは、新しい組み合わせによって、他の誰も立てないユニークな交差点をつくるということです。

たとえば、アメリカのロック×イギリスのモッズスタイル=ビートルズ。リベラルアーツ×テクノロジー=アップル。クラシックの作曲理論×ポップス=坂本龍一、という具合です。

掛け合わせる要素は「超一流」でなくていい

――掛け合わせる要素は、それぞれ一流というほどでなくてもいいのでしょうか。

山口:そうなんです。そこが非常に重要な点です。

私が大学院で文化施設経営の研究をしていた頃、ロンドンにある「劇場経営に特化したコンサルティングファーム」を取材したことがあります。元コンサルタントや元金融機関のアナリストが集まっていて、共通していたのは文化・芸術への深い愛情と知識を持っていることでした。

彼らを単純にコンサルタントとしての能力だけで評価すれば、必ずしも超一流とは言えないかもしれません。

音楽業界の専門家としてやっていけるほどの能力があったかというと、それも疑問です。しかし、オーケストラの経営分析であれば、コスト構造の整理に加えて、実際に演奏を聴いてどのパートが弱いか、レパートリーのバランスはどうかまで分析できる。これは通常のコンサルタントには全く手の出せない領域です。これらの能力が「組み合わせ」として求められる局面になると、彼らは世界に唯一無二の存在になるんです。

だからこそ、安定的に高収益のビジネスを継続できています。しかも彼らにとって、この仕事は天職と言っていいほど充実感のあるものでもあるのです。

私自身も「組み合わせ」で生き残ってきた

――山口さんご自身も、独自の交差点に立っていらっしゃいますね。

山口:もともと学んでいた人文科学や美術史の知識を経営コンサルティングに活かす「価値の新しい組み合わせ」で、コンサルティング業界に自分のブルー・オーシャンをつくってきたという側面があります。

単体で一流になれないからといって、絶望する必要はないんです。それぞれの領域で二流でも、その組み合わせがユニークであれば、唯一無二の存在になれます。「一流になれない」と悩んでいる人こそ、自分の中にある複数の要素の「交差点」に目を向けてみてほしいと思います。