『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第79回では、ネガティブなニュースを「自社の武器」にするPR施策について解説する。
社長ダンマリ「解任要求」の真の狙いは?
新興アパレルメーカー・T-BOXは、自社の買収をもくろむ外資系ファンド・サンデーキャピタルに対抗する施策として、あえて創業社長である花岡拳の解任を議題とする臨時株主総会の開催を取締役会で決議する。
取締役会の閉会後、取締役たちは、すべてはサンデーキャピタルを臨時株主総会に引きずりだし、やっつけるための選択だと花岡に語る。だが花岡は具体的な戦略を語ることもなく、「わかった…」とひと言だけつぶやいて部屋を出るのだった。
その態度に役員たちが疑問や不満を口にする中、役員の1人・大林隆二だけは「とにかく、社長がうまく運んでくれますよ」「我々はついていくしかないんだから」と議論を終わらせようとする。
本当に花岡が解任されれば自身が社長になれるという下心を隠しきれない大林の態度に、他の役員たちは疑念を抱く。
T-BOX全役員から花岡への解任要求。「なんで?社長が解任されなくちゃならないの?」「意味わかんない」と社内に動揺が広がる。オフィス前にはテレビカメラが集まり、ニュース番組でも大々的に取り上げられる。
結果としてそれらの露出は、大きなPR効果を生むだけでなく、社員の結束を強め、空気を引き締めることになるのだった。
ガリガリ君のCMが優秀すぎた
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
PRというと、新商品や新サービスなど、企業にとってポジティブな情報を世の中に広めることだと思われがちだ。だが実際には、企業にとって歓迎しづらい出来事でも大きな効果を生むことがある。
アイスキャンディーの「ガリガリ君」で有名な赤城乳業は2016年4月、ガリガリ君の価格を税抜きで60円から70円へ引き上げた(現在は90円)。
当時は25年ぶりの値上げという、ともすればネガティブに受け止められかねないニュースだったが、赤城乳業では社長をはじめ社員一同が頭を下げるCMを展開。
値上げだけでなく、企業の姿勢までが大きく報じられて話題になった。そのPR効果は大きく、同年度の販売数も前年比10%増と躍進した。
PRとはすなわち「宣伝」と思われがちだが、本来は「Public Relation」の略称だ。つまり世の中との関係をつなげることで、企業の本質的な価値やビジョンを伝えることを意味する。
昨今では、いわゆる「炎上」を意図的に起こして耳目を集める「炎上商法」のような手法が取り沙汰されることもある。
企業にとっては、ネガ・ポジを問わず、自らの姿勢を率直に伝えることこそが社会との関係を築く手段になり得る。今のPRにも通じる話だろう。
自分たちへの圧力をPRの武器に変えたT-BOXだが、一方でその報道を見た花岡のライバル・一ツ橋商事の井川泰子は怒りをあらわにする。井川と組むサンデーキャピタルの福沢ウイリアム太郎は、井川をなだめつつ、花岡と安定株主の分断工作を示唆するのだった。
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク







