PHOTO: JUSTIN METZ FOR WSJ
日本が誇る高級牛肉「和牛」について語る際、つい詩的な表現を用いてしまいがちだ。
和牛を輸入する酒井純平氏は、和牛について尋ねられると、意図せず英語の音節で俳句のようなリズムを作って答えた。「It has a tender / texture, so you don’t really / need to chew the meat.(柔らかい食感だから、肉をかむ必要はあまりない)」。直火焼きの専門家で肉料理本「Prime Cuts」の著者であるジェス・プライルズ氏も、「和牛にはバターのような濃厚さがあり、舌の上でいとも簡単に溶けていく」と叙情的な表現で語った。
和牛という言葉は「日本の牛」を意味するが、この牛肉は黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種という4種の牛の品種のみから生産される。その肉はよく雪の結晶にたとえられる。これは脂肪が織りなす複雑な霜降り模様や、口の中で溶けていくような食感によるものだ。
筆者が初めてステーキハウスで日本の和牛を口にした体験は、これまでの全てを一変させるものだった。提供されたのは約110グラムのリブアイで、脂の重さを和らげる酢の効いた料理や漬物、そしてわさびが添えられていた。他のステーキにあるような鉄っぽいクセはなく、牛肉本来の味わいとバターのような風味、うま味に満ちていた。
国内外の要因が重なり、和牛は全米で普及しつつある。日本では円安が進む一方、和牛の供給が増え余剰が生じている。一方米国では、輸入業者のネットワークが拡大し、和牛がより入手しやすくなった。和牛の卸売りを手がける酒井氏によると、ここ数年で和牛ストリップロインの卸値は1ポンド(約454グラム)当たり65ドル(約1万円)から41ドルへと値下がりしたという。
日本産和牛の小売価格は1ポンド当たり100〜120ドルから始まることが多いが、その濃厚さゆえに通常は少量ずつ消費される。他の種類の牛肉が記録的な高値をつける中、和牛は割安感がある。夏の終わりのバーベキューが最盛期を迎え、テールゲート(アメリカンフットボールなどの試合会場の駐車場で行うパーティー)の季節も控える今、和牛を試す機会は豊富にある。
日本の和牛はなぜ特別なのか
和牛の評判が世界に広まるにつれ、その名の由来となった日本の牛は一時期、米国やオーストラリアに輸出され交配が行われた。これにより和牛ブランドを冠した新たな品種が誕生したが、その全てが同じ優れた品質を備えているわけではない。
「和牛の中には、信じられないほど濃厚で強烈な体験をもたらすものもあれば、『プライム(米農務省が定める最高基準の牛肉)とそう変わらないのに、何がそんなに特別なのか』と思わせるような和牛ステーキもある」と、前出のプライルズ氏は語った。「それは、和牛という名前の価値が薄れてしまったことと深い関係がある」







