「寝ても休んでも疲れが取れない」「なんだかしんどい」「なかなか寝つけない」……。最近、メンタルの不調を訴える人が増えています。ADHD(注意欠如・多動症)で、うつサバイバーのバク@精神科医さんの最新刊『その考え、捨てちゃえば あなたの「思考のくせ」を変える40のヒント』(ダイヤモンド社)は、そうしたメンタル不調から抜け出すための「苦手な人との距離の取り方」や「気持ちをリセットするための方法」などを紹介する一冊。本連載では同書から抜粋・編集して、もっと楽に生きられるようになるためのヒント&解決策をお届けします。

「毎日疲れる」「なんだかしんどい」「なかなか寝つけない」…。その疲労の本当の正体とは?Photo: Adobe Stock

あなたの疲れの本当の正体とは?

 こんにちは。バク@精神科医です。本連載を見つけてくれて、ありがとうございます。

 今、これを読まれているということは、あなたには今の自分が置かれている状況をどうにかしたい、という感覚が1ミリでもあるからではないでしょうか?

・「日曜の夕方、明日からまた1週間が始まる」と思うとぐったりする
・布団に入っても、いろんなことがぐるぐる回り続けて、なかなか寝つけない
・朝起きても、すでに疲れた感じがする
・特に大きな出来事があったわけじゃないのに、なぜかいつもしんどい
・普通に毎日をすごしているだけなのに、自分だけ疲れすぎている気がする
・寝ても休んでも、なかなか疲れが取れない……

 このような状態に、心当たりはありませんか?

 これらのお悩みは、現代を生きる多くの人が、口にできずに抱えている共通の感覚です。私のクリニックにもそうした人たちが多数、訪れています。

 そして、その疲れは、体力や体質の問題ではないと聞いたら、あなたはどう思われるでしょうか?

 最初に断言しておきます。あなたが疲れているのは、あなたに体力がないからでも、疲れやすい体質だからでもありません。また、努力不足でも、根性がないからでもありません。

 あなたを疲れさせている本当の理由。

 それは、あなたの「脳の誤作動」が原因です。

 突然、「脳の誤作動」と言われて、ちょっとビックリされたかもしれませんね。

 この誤作動というのは、あなたの意思とは関係なく、四六時中バックグラウンドで動き続けている、エネルギーを浪費する原因となる思考のことです。いわば、あなたの考え方や行動を左右する脳のOS(あなたを動かす基本ソフト)のバグと言えます。

 突然出てきた言葉ですが、OSというのはOperating System(オペレーティング・システム)の略で、スマホやパソコンを動かしている基本ソフトのことです。iPhoneならiOS、AndroidならAndroid OS、というアレです。

 実は、人間の脳にも同じようなものがあります。家庭・学校・社会から、生まれてから今まで積み重ねてインストールされてきた「思考のベース」が、あなたのOSです。

みんなと仲良くしましょう
人に迷惑をかけてはいけません
努力すれば報われる
親には、逆らってはいけない

 こういった、子どもの頃から繰り返し聞かされてきた言葉が、あなたの脳のOSにインストールされています。
問題は、このOSが何十年もアップデートされていないことです。

 スマホも、何年も使い続けてアップデート対象から外れてしまうと、最新アプリと互換性が取れずに動作が重くなるか、最悪動かなくなりますよね。

 人間の脳のOSも全く同じで、子どもの頃のままのOSで現代社会を生きようとすると、あちこちでエラーが出て、その処理に膨大なエネルギーを浪費するようになっていきます。

 そして、そのバグこそが、あなたの体と心のエネルギーを大量に食い潰しているのです。これに気づかない限り、何時間寝ても、何日休んでも、根本的な疲労は残念ながら、なかなか取れないのです。

スマホやパソコンの例えで考えるとわかりやすい

 私は精神科医として外来で、日々たくさんの患者さんの話を聞いています。外来では、患者さんと一緒に「こう考えてみたら、受け止めてみたらどうでしょう?」という例え話を、毎日山ほどしています。

 しかし、多くの患者さんの考えは、なかなか簡単には切り替わりません。そのため、いろいろな例え話をそのつど考えて、なるべくわかりやすく説明するようにしています。

 そんな例え話の中で、「これは意外に納得感が高いな?」と感じたものがあります。それが、本連載の中でも頻出するスマホやパソコンの例えでした。

「今のあなたの頭の中は、タブがいっぱい開いてるパソコンみたいなものです。なので、処理できなくなって、グルグル回ったまま、固まっちゃっているのです」

「すごく疲れる? それは、休日も仕事のことばかり考えていたら当然ですよ。今のあなたをスマホに例えると、使っていないアプリを10個くらい同時に立ち上げているのと同じ。バッテリーがどんどん減っていくから、疲れるのです」

「しんどい人とは、無理に付き合わなくてもいいんですよ。スマホみたいに相手をミュートしたっていいんです」

「話が全然通じない相手というのは、そもそもあなたと同じ土俵に立っていないのだから当たり前。それはAndroidとiPhoneくらい互換性がないって考えたほうが楽ですよ」

 こんなふうに例え話で説明すると、多くの患者さんがハッとした後に、「なるほど、そうか」と腑(ふ)に落ちた顔をされます。

 しかし、そう説明する私に対して、患者さんから何度かこう言われたことがあります。「先生、なんでそんなふうに割り切って考えられるんですか? いきなりミュートしろと言われても、そんなの無理ですよ~」

 私は最初、そう言う患者さんたちの言葉の意味がよくわかりませんでした。「え、これって普通の考え方じゃないの?」と。

 でも、それを何度も繰り返し言われるうちに、この考え方というのは、世の中の一般的な考え方じゃないのかもしれないと思うようになりました。

 しかし、この考え方を知らないまま、毎日しんどい思いをしている人がいるのなら、ものは試しでやってみてはどうですかと、私は言いたいのです。

 なぜなら、昔の私も、今のあなたや患者さんたちが抱えているのと同じ悩みを抱えて、困っていた時期があったからです。

職場で他人の機嫌に振り回されて、疲れ果ててしまう
・義務感から引き受けてしまった仕事で、大事な休日を潰してしまう
・家族の顔色を見て、断れずに引き受けたルーティーンで疲れ果てる……

 そんな辛い日々からなんとか抜け出せたのは、まわりの友人など、いろいろな人の助言があったことと、先ほど例に挙げた「スマホやパソコンの例えで考えられる」ようになったからです。

「毎日疲れる、しんどい」から抜け出すための
セルフケアの方法

 実際、スマホなどに置き換えて考えてみると、「人間関係において、さも常識だと思われていることに疑問を持つこと、それをやってはいけない感覚」というのは、かなり減りました。

 もちろん、そうは言っても、多くの人は「いやいや、それはマナーとしてやっちゃダメでしょ」と、これを読みながらツッコミを入れている人もいるかもしれませんね。

 でも、そう感じるのは、まだあなたが考え方のOSをアップデートできていないからです。

 本連載で紹介するのは、人生を劇的に変える魔法の方法ではなく、「毎日疲れる、しんどい」から抜け出すためのちょっとした考え方や、心の受け止め方を変えるセルフケアの方法やヒントです。

 それは、例えば、

疲れる人間関係の通知を切る
・使っていない思い込みのアプリを消す
・他人に勝手にメモリを使われないようにする
・一人(孤独)の時間で、自分専用の作業空間を取り戻す
・自分にとって本当に必要なものを、人生のホーム画面に置き直す

 ということです。

あなたは、もっと楽に生きていい

 私がこの連載をお届けしたいのは、主に次のような傾向のある方たちです。

毎日頑張りすぎている人
・優しすぎる人
・他人の顔色、機嫌を見すぎている人
・「自分が悪いのかも」とすぐ思ってしまう人

 そういう人たちに、ぜひ楽になってほしい。

 私が外来で日々感じている、「この人、もっと楽に生きていいのに」という気持ちを、この連載に込めました。

 ただし、ただ読者を優しく慰めるだけの内容ではありません。かといって、「もっと頑張りましょう」と追い立てるものでもありません。

 例えるなら、診察室で私が患者さんに話しているのと同じトーンで、時にちょっとドキッとするような毒を含んだ言葉も使いながら、あなたのOSのバグを一緒に見つけていくための本です。

「それ、本当にあなたが背負う必要ある?」
「その通知、切ってよくないですか?」
「そのアプリ、もう要らないんじゃない?」

 そんな提案を、繰り返ししていきます。ぜひ、最後までお付き合いください。

あなたのOSは、いつでも書き換えられる

 本連載を通じて、スマホ・アプリ・通知・バッテリー・ファイアウォールなど、現代人が日常的に使っているツールに例えながら、何がどうなって今のあなたがしんどいのか? どうすれば楽になれるのか? という話を進めていきます。

 今のあなたが直面している状態について、いつも触っているスマホの操作と同じ感覚で見直してみたら、いつもよりちょっとだけ「こういうことかな?」と納得できるはずです。

 あなたが疲れているのは、ちょっと古いOSが入ったまま生きているからなのでは、ということをまずは知っていただきたいのです。

 OSというのは、あなたがやろうと思えば極端な話、いつでもすぐに書き換えられます。しかも、自分でバグに気づきさえすれば、自力で少しずつアップデートしていけるようにもなります。

 そして、本連載を読み終わる頃には、あなたの頭の中のOSは、現代社会でちゃんと動く最新のバージョンに、アップデートされる準備が整っているはずです。

バク@精神科医
元内科の精神科専門医。中高生時代イジメにあうが親や学校からの理解はなく行く場所の確保を模索するうちにスクールカウンセラーの存在を知り、カウンセラーへの道を志し文系に進学。しかし「カウンセラーで食べていけるのはごく一部」という現実を知り一念発起し医師を目指し理転後、都内某私立大学医学部に入学。奨学金を得ながら勉学とバイトに勤しみ大学を卒業。医師国家試験に合格。当初、内科医を希望したが医師研修中に父親が亡くなった喪失体験も重なり休職に至る。この時医師になることを諦めかけるが先輩の精神科主治医と出会うことで精神科医として「第二の医師人生」をスタート。精神科単科病院にて様々な分野の精神科領域の治療に従事。アルコール依存症などの依存症患者への治療を通じて「人間の欲望」について示唆を得る。現在は双極性障害(躁うつ病)や統合失調症、パーソナリティ障害などの患者を対象とする開業医として診察にあたる。「よりわかりやすい、誤解のない精神科医療」の啓発を目標に、医療従事者、患者、企業対象の講演等を行う。うつ病を経験し、ADHD(注意欠如・多動症)をもつ医師としてX(@DrYumekuiBaku)でも人気急上昇中。Xフォロワー9.2万人。著書に『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)、『依存メンタルを力に変えるレッスン』(大和書房)がある。