通勤もなく、家から一歩も出ていない。それなのに、夕方になるとなぜかぐったりする。リモートワークでは、朝起きてすぐにパソコンを開き、そのまま何時間も座りっぱなしになる人も少なくない。実は、こうした働き方には、知らないうちに体力や集中力を削る「落とし穴」がある。疲れをためないために見直したいポイントを『体力がすべて』から紹介する。

【リモートワークの落とし穴】朝イチ即PC、座りっぱなし…夕方にはぐったりする人の共通点Photo: Adobe Stock

リモートワークで、生活リズムが整わない

【悩みの例】
 IT業界でシステムエンジニアをしています。
 週のほとんどが在宅勤務のため、朝は始業ギリギリまで寝て、起きてすぐにパソコンを開く生活です。オンライン会議が続くことも多く、気づけば何時間も座りっぱなしになっています。
 通勤がない分、体力的には楽なはずなのですが、午後になると頭がぼんやりして、夕方には首や肩、腰がこわばり、強い疲労感に襲われます。
 仕事が終わっても、オンとオフの切り替えがうまくできず、翌朝もすっきり起きられません。
 家から一歩も出ていないのに、どうしてこんなに疲れるのでしょうか。

長時間の座りっぱなしと作業環境が体力を削る

 在宅勤務では、通勤や移動の負担が減る一方で、オフィス勤務よりも座って過ごす時間が長くなり、日々の歩数も減りやすい(*1)。

 また、長時間座り続けることや、机・椅子・画面の位置などの作業環境が十分に整っていないことは、首や腰の不調にもつながる(*2)。

 自宅で働く場合は、換気や温度・湿度などの室内環境も見過ごせない。こうした条件が十分でないと、頭の働きに影響する可能性がある。在宅勤務者を1年間追跡した研究では、部屋の暑さ・寒さや、室内の二酸化炭素(CO2)濃度が、頭の働きと関連していた(*3)。

 つまり、在宅勤務は、外に出ていないから楽だとは限らない。座りっぱなしや室内環境の影響が重なることで、余力は削られていく。

 さらに、勤務時間外まで仕事の対応が続くと、仕事と休みの境目が曖昧になり、疲れが抜けにくくなる。

余力を残すための3つのポイント

 在宅勤務で余力を守るには、通勤や移動の中で自然にできていた切り替えを、自分でつくる必要がある。意識したいのは3つだ。長時間の座りっぱなしを断つこと。部屋の空気と温度を整えること。始業と終業の切り替えをはっきりさせることだ。

長時間の座りっぱなしを断ち、こまめに体を動かす

 長く同じ姿勢を続けていると、首や腰に負担がかかりやすくなり、体のこわばりも強まりやすい。

 在宅勤務では、気づかないうちに何時間も座り続けてしまうことがある。だからこそ、仕事の区切りごとに、いったん席を立つ、少し歩く、軽く背伸びをする、といった短い動きをこまめに挟むことが大切になる。

 同じ姿勢をいったん断つだけでも、こわばりが改善されやすくなり、体のつらさや仕事のしづらさが和らぎやすい。

 背中が丸まり、顔が前に出てきたと感じたら、一度息を吐いて胸を開き、画面との距離を取って座り直したい。そうして姿勢を立て直すだけでも、首や肩の張りは出にくくなる。

部屋の空気と温度を整える

 閉め切った部屋で作業を続けていると、空気がこもりやすく、室温にも偏りが出やすい。換気が不十分だったり、暑すぎたり寒すぎたりする環境では、頭が重く感じる、ぼんやりする、集中しにくいといった不調につながることがある。

 在宅勤務では、まず空気が滞りにくく、無理なく過ごせる環境を整えておきたい。窓やドアを開ける、換気設備を使う、室温が上がりすぎたり下がりすぎたりしないよう調整する。こうした小さな工夫だけでも、仕事のしやすさは変わる。

 在宅勤務では、環境の負荷は目立ちにくく、不調の原因として見過ごされやすい。だからこそ、空気と温度を整えておくだけでも、1日の後半まで集中力や快適さを保ちやすくなる。

朝の始まりと終業時の切り替えをはっきりさせる

 通勤がない働き方では、仕事の始まりと終わりの合図を、自分でつくることが大切になる。

 始業ぎりぎりまで寝て、起きてすぐ仕事に入る生活では、体も頭もすぐには動き出しにくい。起床時刻をできるだけ一定に保ち、起きたら屋外に出る、あるいは窓際で朝の光を浴びる。そうした習慣をつくるだけでも、1日のリズムは整いやすくなる。

 一方で、就寝直前まで仕事を続けたり、明るい画面を見続けたりすると、仕事の緊張が夜まで残りやすい。終業時刻の目安をあらかじめ決めておき、仕事が終わったらメールやチャットからいったん離れる。寝る前は照明や画面の刺激を落とし、頭と体を休息へ向かわせたい。

 朝の始まりと夜の終わりが整ってくると、仕事と生活の境目もつきやすくなる。その結果、その日に使える力、すなわち実効体力も保ちやすくなる。夜はきちんと仕事を終えた状態にしておくことが、翌日の回復にもつながっていく。

【注釈】
1. Schöne C, Sauter M, Backé EM, Prigge M, Brendler C, Hegewald J. The impact of working from home on sedentary behaviour and physical activity compared to onsite work in the working population: a systematic review and meta-analysis. BMC Public Health. 2025 Nov 17;25(1):3963.
2. Fadel M, Bodin J, Cros F, Descatha A, Roquelaure Y. Teleworking and musculoskeletal disorders: a systematic review. Int J Environ Res Public Health. 2023 Mar 11;20(6):4973.
3. Young A, Parikh S, Dedesko S, Bliss M, Xu J, Zanobetti A, et al. Home indoor air quality and cognitive function over one year for people working remotely during COVID-19. Build Environ. 2024 Jun 1;257:111551.