昔ほど旅行にワクワクしない。美術館の説明を読まない、レストランでは無難な料理を頼む、現地で調べものをしなくなった――。それを「年を取ったから」と片づけていないでしょうか。実は旅ほど、老眼の影響を受けやすい行動はありません。『100歳アイ』(伊勢屋貴史著)から、旅行と「見え方」の意外な関係を解説します。

「旅行がつまらなくなった」のは体力のせい? 眼科医が指摘する40代からの意外な変化Photo: Adobe Stock

美術館の説明を読まなくなっていませんか?

 旅行先で、こんなことはありませんか。

 美術館や博物館へ行っても、展示物の横にある説明文を以前ほど読まなくなった。

 レストランでは、メニューをじっくり見ないで「おすすめで」と頼んでしまう。

 ガイドブックを開くのが面倒で、結局、事前に知っていた場所だけを回る。

 スマートフォンで現地情報を調べる回数も減った。

 一つひとつは、本当に小さな変化です。

 だから本人は、

「年を取って、旅行の楽しみ方が変わったんだろう」

 くらいに思っています。

 でも、その変化の一部には「見え方」が関係しているかもしれません。

旅行ほど「見る距離」が激しく変わる趣味はない

 考えてみると、旅行というのは目にとってかなり特殊な行動です。

 遠くの山を見る。

 少し先の建物を見る。

 足元の段差を見る。

 案内板を読む。

 スマホの地図を見る。

 切符の小さな座席番号を確認する。

 レストランでは手元のメニューを読み、顔を上げて向かいの人と話し、運ばれてきた料理を見る。

 遠く、中間、近く。

 旅行中の目は、一日中、この距離を行ったり来たりしています。

 若い頃は、それをほとんど意識しません。

 ところが年齢を重ねてピントを合わせる力が低下すると、この切り替えが少しずつ負担になる。

 それでも人間はうまくできていて、面倒な行動を自然に減らします。

「見えない」のではなく、「見なくなる」

 ここが老眼の厄介なところです。

 メニューがまったく読めないわけではありません。

 案内板が見えないわけでもない。

 でも、ちょっと面倒になる。

 だから読まない。

 現地の歴史について詳しく調べれば、目の前の建物の見え方が変わるかもしれない。でも、スマホを開いて小さな文字を追うのがおっくうだから調べない。

 料理の説明を読めば、その土地でしか食べられないものを発見できたかもしれない。でも、メニューを細かく見るのが面倒だから無難なものを頼む。

 これが一日に何度も積み重なったらどうでしょう。

 旅行から得られる情報量そのものが減ります。

 情報が減れば、発見も減る。発見が減れば、感動も減ります。

「昔ほど旅行が面白くない」

 その一部は、自分の感性が衰えたのではなく、単に「見ること」が面倒になっているだけかもしれないのです。

旅行に合わせて「目」を準備する

 だから私は、旅行が好きな人ほど、「旅行に合った見え方」を考えてほしいと思っています。

 旅行では、近くだけ、遠くだけ見えればいいわけではありません。

 遠くの景色も見たい。手元の文字も読みたい。その間の距離も自然に見たい。

 眼鏡なら累進レンズ、コンタクトなら遠近両用など、今は生活スタイルに合わせて見え方を整える選択肢があります。

 老眼対策というと、

「小さい字を読むためのもの」

 と思われがちです。

 でも、本当は違います。

 見え方を整えるということは、「自分がこれから何を楽しみたいか」に合わせて目を準備することでもあります。

 旅先で出会った景色、人、文化、料理を、面倒くさがらずにもう一歩深く見る。

 そのための老眼対策なら、ずいぶん前向きなものに見えてきませんか。