不安や緊張で
呼吸が浅くなるワケ
私たちは、「心臓を動かそう」と思っても、心拍を直接コントロールすることはできません。「血管を広げよう」と思っても、思いどおりに広げることはできません。「胃腸を動かそう」としても、すぐに動くわけではありません。
しかし、呼吸は違います。深く吸う。長く吐く。少し止める。ゆっくり繰り返す。こうしたことは、自分の意思で行うことができます。
だからこそ、呼吸は自律神経を整えるうえで非常に有効なアプローチなのです。
自律神経は、交感神経と副交感神経の2つで成り立っています。呼吸は、この2つの神経の働きに直接関わっています。
不安なとき、緊張しているとき、焦っているとき、人の呼吸は浅く、速くなります。胸の上のほうだけで小さく息を吸い、吐く息も短くなります。すると、交感神経がますます優位になり、体はどんどん緊張状態に傾いていきます。
呼吸が浅いとき、体は酸素を十分に取り込みにくくなります。血流も滞りやすくなり、脳に必要な酸素や栄養が届きにくくなります。すると、頭がぼんやりする、集中できない、考えがまとまらない、という状態が起こりやすくなります。
不安や緊張に支配されているときの状態を「息が詰まる」と表現しますが、実際に体と頭は低酸素状態に陥っているのです。
「息を吐き切る」と
自然に吸えるようになる
では、そんなとき、どうやって呼吸を整えたらよいのでしょうか。
ポイントは、「吸う」より先に「吐く」ことです。
緊張している人が、呼吸を整えようとするとき、まず息を大きく吸おうとしがちです。しかし、浅い呼吸のまま息を吸い足そうとしても、胸の上のほうに力が入るだけで、かえって苦しくなることがあります。
『メンタルは肉体が9割』(小林弘幸 宝島社)
そこで、まず必要なのは、「息を吐き切る」ことです。口から細く、長く息を吐く。吐き切れたら、その反動で自然に鼻から息を吸います。この順番を意識すると、呼吸は少しずつ深くなっていきます。吐く時間を長くすると、副交感神経の働きが高まりやすくなり、過剰に高ぶった交感神経も落ち着きやすくなります。
呼吸には、体の状態を瞬時に変える力があることがわかっています。
末梢血管(手足の先まで血流を運ぶ、細い血管)の血流の量を測定する機械があるのですが、呼吸を止めたその瞬間に、末梢血管への血液の流れが少なくなるのです。
速く浅い呼吸になっていることに気づいたら、まずは息を長くゆっくりと吐いてみましょう。呼吸を整えることは、自分の意思で自律神経のバランスをよくするための、最も身近で即効性の高い方法の一つです。







