政治家や役人の仕事ぶりに、なぜこうも首をかしげてしまうことが多いのか。じつはそこには個人の資質ではなく、どんな組織にも共通する昇進の仕組みが関係している。民間企業で働く人にとっても決して他人事ではないだろう。本記事では、『[新装版]ピーターの法則』の内容から、有能な人材ほど昇進とともに成果を出せなくなる理由と、それを避けるための具体的な方法を紹介する。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局)
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昇進が生む「無能」の正体
「なぜ、あの人があのポストにいるのか」。職場でそう感じたことはないだろうか。しかも厄介なのは、その相手が最初から無能だったわけではないという点だ。優秀だったはずの人が、昇進した途端に精彩を欠くことがある。
この現象を説明したのが、教育学者ローレンス・J・ピーターが提唱した「ピーターの法則」である。
階層社会では、人は現在の仕事で有能だと認められる限り昇進を重ね、やがて自分の力では務まらない地位、すなわち無能レベルにたどりつき、そこで止まる。本書は、この組織の宿命を解き明かした一冊だ。
著者はこれを一部の体制に限った話とは考えていない。
政党という出世の階段
わかりやすい例が、政治の世界だ。
私たち有権者は、最も有能な代表を選んでいるつもりでいる。しかし実際に候補者を選び出しているのは、政党という組織である。
その政党もまた、一つの階層社会だ。上手に支持者を増やすメンバーがリーダーになり、選挙資金集めで功績を上げた党員は、公認候補を決める委員会のメンバーになる。
だが著者は、資金集めの腕前と、議員にふさわしい人物を見抜く力は別だと述べる。しかも委員会が判断の基準にするのは、議員として適切かどうかではなく、選挙に勝てそうかどうかなのだ。
演説がうまい、テレビ映りがいい。それは選挙に勝つ能力であって、国を動かす能力ではない。
「数字を上げた」という理由だけで、社員を管理職に引き上げる会社にも、同じような出世の階段が存在している。
肩書きが増えるほど危うい
本書には、無能の広がり方を左右する意外な要素も示されている。ポストの数だ。
組織図に役職を増やせば、その分だけ昇進の機会は増える。だが同時に、人が自分の限界にぶつかる回数も増える。
主任、係長、マネジャーと階段を細かく刻むほど、無能になる機会が増えるという理屈である。
働く側への示唆は単純だ。肩書きが多い会社を「昇進しやすい会社」と喜ぶのは早計かもしれない。見るべきは階段の段数ではなく、その階段の先に自分が力を発揮できる仕事があるかどうかだ。
ただ出世を望むのではなく、次の地位で求められるのが、「いまの自分が得意なことか、それともまったく別の能力か」を検討する必要があるだろう。




