「仕事帰りに、ついでに眼鏡を作った」――そんな何気ない行動が、目の老化を早めているとしたらどうでしょうか。実は、眼鏡を作る“時間帯”によって、見え方や目への負担は大きく変わります。あなたのその眼鏡、本当に目に合っていますか。話題の書籍『100歳アイ』(伊勢屋貴史著)から、意外と知られていない落とし穴を解説します。

【「会社帰りの眼鏡作り」はNG!】たった一つのタイミングミスで視力が狂う…「午後の眼鏡」はなぜ危ない?Photo: Adobe Stock

眼鏡・コンタクトは午前中に作りましょう

 近視の過矯正のループに陥らないため、絶対に気をつけていただきたいことがあります。それは、「眼鏡やコンタクトは午前中に作ろう」ということです。

 30歳代後半の男性会社員、中野さん(仮名)はある日ふと思い立ち、会社帰りに閉店間際の眼鏡ショップに飛び込みました。店頭の測定器で視力を測ってもらい仕上がった新しい眼鏡は、今まで見えなかった遠くの看板までくっきりと見えて大満足。ちょっとおしゃれなフレームで、周囲の評判も上々でした。

 ところが新しい眼鏡を使い始めてまもなく、スマホの文字が読みにくいことに気づきました。「えっ、老眼? 40歳にもなっていないのに、まさか」。しばらくすると、今度は遠くのものも、最初のころより見えにくくなってきました。自分の目に何が起きているのか。すっかり不安になった中野さんは、仕事が早めに終わった日にまた別の眼鏡ショップに行って、今度はもっとよく見える眼鏡を作ろうと考えています――。

視力は一日の中で大きく変動します

 中野さんの失敗は、目がへとへとに疲れている会社帰りに新しい眼鏡を作ったことです。先にご説明したとおり、30歳代後半ともなると目の調節力は気づかぬうちにかなり衰えており、毛様体筋はフル稼働。水晶体を引っ張る力を緩めようと一日中膨らみ続け、夕方になると膨らんだ状態で凝り固まってしまっています。

 その状態で遠くを見ようとしてもすぐに遠くにピントを合わせるのは難しく、「視力」は低い数値になってしまいがちです。また、一日働いた目は涙が足りないドライアイにもなりやすく、おなじみ視力検査の「c」のマークもかすんで、すっかり「o」の風情です。

 そう、視力は一日の中で大きく変動します。夕方や夜、特に一日目を酷使した後は、普段とは全く違う数値が出てしまうことも珍しくありません。そんな状態で作った眼鏡やコンタクトを、目がフレッシュな状態の朝や昼に使ったら、度が強すぎるのです。過矯正の状態なので近くの見え方は最悪。目が疲れたり、老眼が進んだように感じたりするばかりか、頭痛や体調不良の原因になるおそれさえあります。

 なので、眼鏡は午前中、できればしっかりと睡眠をとった翌朝の、目が元気な状態で作ることをおすすめします。

 もちろん、仕事や他の用事との兼ね合いで夕方にしか行けないこともあると思いますので、その場合は「今、自分の視力は落ちている」という点を頭に入れて、弱めの度数を心がけてください

 なお、中野さんはその後、街の眼鏡ショップではなく私のクリニックを訪れ、私の説明を聞いて度数控えめのレンズを選んでくれました。今は近視用の眼鏡で元気に生活されていますが、いずれもう少し目の老化が進み、老眼の症状が出てきたら、軽い矯正が入った「アシストレンズ」をおすすめするつもりです。アシストレンズについては、この連載であらためて詳しくお伝えします。