「ヒトラーに譲れば、戦争は防げる」。第二次世界大戦前夜、イギリスやフランスはそう考え、ドイツの領土拡大を一部認める宥和政策を選んだ。しかし、その判断は平和を守るどころか、ヒトラーのさらなる侵攻を許す結果となる。なぜ世界は独裁者の野心を止められなかったのか。『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのアメリカ史』から、戦争へと傾いていった1930年代の世界を『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのアメリカ史』から紐解く。

「ヒトラーに譲れば戦争は防げる」はずだった…世界を戦争へ近づけた致命的な誤算とはPhoto: Adobe Stock

第二次世界大戦:1930年代~1945年

 世界は第一次世界大戦、1918年のパンデミック、世界恐慌を経験して、不安定な状態にあった。そして再び、緊張が高まりつつある。土地と資源の需要が高まり、国々は同盟を結んでいく。外国人への嫌悪が増し、世界中の大国が自分たちの問題を罪のない人々のせいにしようとしていた。

 第二次世界大戦は、大きくはヨーロッパ・アフリカ・中東と、アジア・太平洋のふたつの地域でくり広げられる。そして多くのアメリカ国民にとっては、アメリカ国内も戦場にほかならなかった。

全体主義

 第一次世界大戦後、ヨーロッパに広がった貧困と不安定さ、不満は、全体主義の独裁者の台頭へとつながった。独裁者たちは、自分がすべてを完全に支配できたら、変化を起こせると約束した。全体主義の指導者たちは、確かに自国に安定をもたらしたけれど、それは個人の自由を犠牲にしたものだった。

 イタリアはヴェルサイユ条約の交渉にあたった四巨頭の国のひとつだったけれど、経済の破綻によって混乱に陥った。1922年、ファシストの全体主義運動を率いるベニート=ムッソリーニは、イタリア国王に圧力をかけ、権力を与えさせた。彼はドゥーチェ(指導者)という呼び名で独裁者を名乗った。

 ソヴィエト社会主義共和国連邦では、1924年にレーニンが亡くなると、ヨシフ=スターリンが権力を引き継いだ。彼は、自分の権力を脅かしそうな同胞を、容赦なく粛清するようになった。

 ドイツでは、第一次世界大戦の賠償金の支払いと、軍の縮小に伴う負債から、経済が破綻し、国が崩壊しそうになっていた。アドルフ=ヒトラー国民社会主義ドイツ労働者党、通称ナチ党(ドイツ語の国民社会主義NATIONALSOZIALISTISCHEに由来する)が、1932年の選挙で勝利し、ヒトラーは首相に指名される。彼はアーリア人(北ヨーロッパの伝統を受け継ぐ、ユダヤ人ではない人々)が優れているという考えを広め、ドイツを苦しめている経済的、社会的問題をユダヤ人のせいにした。ヒトラーは自ら総統を名乗り、権力を握った。

 一方、日本では、1941年に軍の指導者である東条英機が内閣総理大臣に選ばれた。東条は独裁者となり、やがて天皇よりも大きな影響力を持つようになる。

全体主義の拡大

 全体主義の指導者はみな、自国がほかのどの国よりも優れていて、征服する権利がある、と信じていた。

 日本は現在の中国東北部にあたる満州(日本は拡大のため、天然資源を持つ植民地が必要だった)を皮切りに、中国を侵略する。そして1937年、南京に侵攻して南京事件を起こし、市と市民を激しく攻撃する。

 イタリアは、1935年にエチオピアに侵攻し、その後国際連盟から脱退する。1939年には、アルバニアを併合。

 ドイツは、1936年にヴェルサイユ条約で非武装の緩衝地帯とされていた石炭の豊富な地域、ラインラントに進駐する。1938年には、オーストリアを併合する。

ミュンヘンの宥和

 ドイツの次の標的は、ズデーテン地方だった。この地方はチェコスロバキア領内にあり、ドイツ系住民が多く暮らしていた。チェコスロバキアは、フランスとイギリスに助けを求めた。

 1938年9月、ミュンヘンで開かれた会談で、イギリスの首相ネヴィル=チェンバレンらは、ほかの地域に侵攻しないと約束するなら、ヒトラーがズデーテン地方を得ることを認めた。この宥和政策は、新たな戦争の勃発を防ぐはずだった。

 ところが、1939年3月、ヒトラーは約束を破り、チェコスロバキアの残りの地域を支配下に置いた。イギリスとフランスは、ヒトラーが次に狙っていると思われるポーランドを防衛すると警告した。

枢軸国

 似たような考え方を持つこれらの独裁者たちは、同盟を結んだ。1936年、ヒトラーとムッソリーニは、ベルリン=ローマ枢軸、またの名を枢軸国と呼ばれる同盟を結成し、イタリアとドイツの指導者は、戦争になったときはお互いに助け合うことを約束した。1940年には、日本が加わる。

 スターリンは枢軸国に加わらなかったけれど、ドイツと独ソ不可侵条約を結んだ。両国はお互いに攻撃しないことで合意し、成立したばかりのポーランドを獲得し、両国で分割することもひそかに決めた。