病気に強い作物や栄養豊富な家畜を作り出す「遺伝子工学」。環境や体内のシグナルに応じて働く遺伝子の仕組みを利用し、DNAの鎖を分子レベルで操作する技術は、現代の食を支えている。遺伝子組換え生物がもたらす品質向上のメリットから必須遺伝子の喪失による生態系へのリスクまで『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からの生物学』から解説する。(ダイヤモンド編集局)
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遺伝子発現と遺伝子工学
それぞれの遺伝子が細胞内で使われて、何らかの生成物が作られることを、発現という。この遺伝子発現は、身体に何が必要であるかや、環境からどのようなシグナルを受け取るかによって左右される。遺伝子発現は体内のあらゆる化学反応を司る。
生物学的プロセスや化学的プロセスによって、細胞内の遺伝子を人工的に変えることができる。
その手法を遺伝子工学という。
遺伝子工学を用いてDNAを操作すれば、体内でさまざまな活動を起こすことができる。
品質向上と絶滅のリスク
我々人類は、遺伝子操作によってすでに作物や家畜を、病気への耐性を持ったものに変えたり、もっと速く成長できるようにしたり、もっと栄養価が高いものにしたりしている。
人間の目的に合わせて作物や家畜に遺伝子操作を施すことで、食物の品質を向上させることができる。
しかしそれと同時に、その作物や家畜が特定の環境で生きるのに役立つ遺伝子が失われかねない。
ある生物種が必須の遺伝子を失って絶滅したら、その生物種を含んでいた環境が大きな影響を受ける可能性がある。
遺伝子組換え生物と倫理
科学では、人類・生物・環境にとって何が望ましいかに基づいて、従うべき一連の規則が設けられている。
遺伝子工学の進歩によって、そのような規則が数多く作られた。
遺伝子操作を施した作物や家畜を、遺伝子組換え生物(GMO)という。
ほとんどの遺伝子組換え生物は、作物に病気への耐性を持たせるために作られた。
遺伝子組換え生物の例としては、トウモロコシやダイズなどがある。
DNAを切断・結合する「制限酵素」
遺伝子工学には、DNA鎖の一部を除去したり追加したりするなど、分子生物学のさまざまな手法が用いられる。
望みどおりの数や順番の塩基対を人工的に追加する場合が多い。
DNA鎖の一部を除去したり追加したりするには、制限酵素と呼ばれる特別なタンパク質が用いられる。
制限酵素は、DNAの一方の鎖の上にある特定の2つの塩基のあいだの結合を切って、もう一方の鎖の上でもそれと同じ2つの塩基のあいだの結合を切る。
するとDNAの切れた場所に、相補対を持たないヌクレオチドが何個か残って、1本鎖の突出部ができる。
このDNA断片は別の付着末端に容易にくっつく。



