170センチを超える長身と当時は珍しかったパンツスタイルがトレードマークで、彼女のスタイルはトレンドにもなりました。

 彼女は、21歳だった1928年に結婚して27歳で離婚。何度も共演していた男性俳優とパートナーとして20年以上共に暮らし、1968年に看取っています。その後、96歳で亡くなるまで独身を貫きました。

 冒頭の言葉は、70代のときにテレビのインタビューで答えたものです。彼女が選んだパンツスタイルは、“女性らしく”生きることを選ばなかった彼女の意志の現れでした。自分で自分を養い、自分らしく生きたのです。

 たとえ大金持ちになれなくても、自分のやりたい仕事を精一杯やって、食べていけるだけのお金を自分で稼ぐことができれば、充実感で家族がいないことなんて気にならないのかもしれませんね。

結婚していないから不幸?
多くの人の思い込みを完全否定

ダイアン・キートン
結婚していないからといって、私の人生がつまらないなんて思いません。

そんな「オールドミス神話」はナンセンスです。
『脱力名言。』書影脱力名言。』(大山くまお、三笠書房)

 女優の言葉を続けて紹介します。ダイアン・キートンは個性的なスタイルで知られた名女優です。キャリアの中で「女性の複雑さ」を演じ続け、フェミニズムの象徴ともいわれました。生涯未婚を貫き、50歳を過ぎてから2人の養子を迎えています。

「オールドミス」とは昨今あまり聞かなくなった言葉ですが、いわゆる婚期を逃した年配女性を指す蔑称です(キートンの元の言葉は「the old maid」)。

 結婚していないから不幸、家族がいないから寂しい、という多くの人の思い込みを、彼女は完全に否定しています。

 女優として活躍を続けたキートンは、2024年、78歳のときに『アーサーズ・ウイスキー』というコメディー映画に主演しました。特別なウイスキーを飲むと6時間だけ若返るという、なんとも屈託のない物語です。2025年10月にこの世を去りましたが、彼女が体現したのは「結婚していないから不幸」という世俗的な枠組みを軽やかに飛び越えていく姿でした。