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企業オーナーや起業家、医師といった富裕層を中心に近年、結婚前に夫婦間のルールや離婚時の財産分与について定める「婚前契約(夫婦財産契約)が注目を集めている。「プレナップ」とも呼ばれ、メジャーリーガーの大谷翔平選手も結婚に際して締結したと報じられたことで、耳にした人も多いだろう。多額の資産を保有する富裕層にとって、無防備な婚姻は将来的に事業継続や資産保全の大きなリスクとなりかねない。連載『富裕層必見! 資産防衛&節税術』の第19回では、資産家夫婦の財産分与トラブルを防ぎ、安定した結婚生活を送るための「婚前契約」の法的意義と実務上の重要ポイントを解説する。(岩崎総合法律事務所代表弁護士・シニアプライベートバンカー 岩崎隼人)
経営権を揺るがす離婚問題
「結婚」は人生最大の「契約」と心得よ
ビジネスの現場では緻密な契約交渉を重ねる経営者であっても、こと人生最大の「契約」とも言うべき「結婚」においては、なぜか無防備なまま印鑑を押している。
統計によれば、日本の離婚率(1年間における婚姻件数に占める離婚件数の割合)は約38%に達している。もし、何の対策も講じないまま離婚に至った場合、経営者が心血を注いで成長させた会社の株式や先代から受け継いだ資産が、「財産分与」という名の下に流出するリスクがある。
これは個人の金銭問題にとどまらず、企業の支配権を揺るがし、従業員やステークホルダーに多大な影響を及ぼす「事業継続の危機」にも直結しかねない。
こうした事態を未然に防ぎ、かつパートナーとの健全な信頼関係を維持するための手段の一つが「婚前契約」である。
次ページから、財産が大きく目減りしかねない離婚に伴う四つの紛争リスクと、これに備えるための婚前契約を活用した三つの資産防衛術を解説しよう。







