人類をパンデミックの脅威から守るために用いられる抗生物質や抗ウイルス薬、そしてワクチン。これらはヒトの正常な細胞を傷つけず、病原体だけを識別して攻撃する非常に精巧なシステムを持っている。しかし、抗生物質は消化を助ける体内の有用な細菌まで殺してしまうリスクも伴う。薬が敵を見分けるメカニズムから善玉菌への影響、そして記憶細胞が病原体を覚えて撃退するワクチンの仕組みまで『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からの生物学』から紐解く。(ダイヤモンド編集局)

様々な薬の画像Photo: Adobe Stock

パンデミックを防ぐ医療技術の仕組み

現代では生物学者や医師によって、パンデミックを防ぐための新たな方法がいくつも開発されている。
それは、抗生物質・抗ウイルス薬・ワクチンを用いる方法である。
抗生物質とは、細菌を殺したり、細菌の増殖を抑えたりする医薬品のことで、抗ウイルス薬とは、ウイルスの複製を食い止める医薬品のことである。

「自分の細胞」を守り「有用な菌」も殺す理由

どちらも、細菌やウイルスは持っているが、ヒトの正常な細胞は持っていないようなプロセスまたは分子を攻撃することで作用する。
たとえば多くの種類の抗生物質は、細菌が細胞壁を作るのを妨げることで作用するが、動物細胞は細胞壁を持っていないため、ヒトの細胞には影響をおよぼさない。
もちろん、ヒトに有用な細菌も多くいる。
たとえば消化など、人体の重要な活動を助けている細菌もある。
抗生物質はそのような細菌も殺してしまう。

免疫系を活性化させるワクチンのプロセス

ワクチンは、感染に対する免疫系の作用を促す物質である。
ワクチンには、標的である病原体の抗原が含まれていて、それが抗体の生成を促す。
ワクチンは、死んだ、または弱らせた病原体から作られる。
ワクチンを接種すると、病原体に感染したのと似た状態になり、免疫系が活性化してT細胞や抗体が作られる。
免疫系はその病原体の表面タンパク質を識別する。

記憶細胞が病原体を撃退するメカニズム

すると記憶細胞がその病原体の表面タンパク質を記憶して、その病原体との戦い方を身につけ、抗原がなくなってからも体内に残りつづける。
こうして免疫系は、その同じ表面タンパク質を認識して攻撃に立ち向かう態勢を整える。
ワクチンを接種しておけば、その病原体が身体に侵入しても、記憶細胞がすぐさま抗体を生成してその病原体を殺してくれる。
インフルエンザワクチンは、その年に流行しそうな何種類かのインフルエンザウイルス株から作られる。