『三国志』といえば、劉備、曹操、諸葛亮――。だが、物語の後半に目を向けると、魏の権力構造を内側から大きく動かした「渋い実力者」が浮かび上がる。司馬懿の長男・司馬師だ。父が築いた基盤を受け継ぎ、反対勢力を抑え、弟の司馬昭とともに司馬氏の支配を固めた彼は、なぜこれほど重要なのか。『地図で学ぶ「深読み世界史」』の著者が、群雄割拠の英雄譚とはひと味違う、三国志末期の“権力をめぐる政治劇”を解説。もし彼が長生きしていたら晋への道はどう変わったのか、歴史の「もしも」とともに司馬師の知られざる魅力を読み解く。
父・司馬懿よりも「魏の乗っ取り」を進めた司馬師
『三国志』で好きな人物は誰かと聞かれると、劉備、曹操、諸葛亮、周瑜あたりの名前がまず挙がりやすい。だが、三国志の後半まで目を向けると、もっと渋くて面白い人物がいる。司馬師だ。
司馬師は司馬懿の長男で、のちに魏の実権を握る司馬氏の中核となった人物である。父の司馬懿は高平陵の変によって政敵を排除し、魏の権力構造を大きく塗り替えた。しかし、司馬懿本人が最初から「魏を倒して自分の王朝を作る」とまで考えていたかは、必ずしもはっきりしない。
むしろ面白いのは、その父が作った権力基盤を、息子の司馬師がよりはっきりと「乗っ取り」の方向へ進めていったように見えることだ。しかも司馬師は、単に強引なだけではない。反対勢力を抑え、軍事面でも主導権を握り、弟の司馬昭を使いながら一族の権力を固めていく。
ここに、三国志前半とは違う魅力がある。劉備や曹操の時代は、群雄が国を作っていく物語だった。ところが末期になると、すでにできあがった国家の内部で、誰が実権を握るのかという政治劇に変わっていく。司馬師は、その転換点に立つ人物なのである。
もし司馬師が長生きしていたら、晋はどうなっていたのか?
さらに彼は、あと少し生きていれば何をしたのか分からない、というところで亡くなる。もし司馬師が長生きしていたら、司馬昭や司馬炎とは違う形で晋への道を進めたかもしれない。
歴史では結果を残した人物ばかりが目立つが、実際に大きな転換を起こすのは、その一歩手前で制度や人脈を整えた人物であることも多い。司馬師はまさにそのタイプだった。完成した人物ではなく、可能性を残して死んだ人物だからこそ想像が広がる。派手さはなくても、権力が動く瞬間を見たい人にはたまらない人物である。
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第1章 第三の航路を求めて――後発諸国の挑戦
第2章 科学と冒険 19~20世紀の偉業と悲劇
第3章 北極海航路 アメリカ、ロシア、中国の暗闘が始まる
第3部 アルプス交通路――近代欧米を読み解くためのスイス
第1章 スイスの歴史 ヨーロッパ屈指の経済圏
第2章 軍事強国と宗教改革 資本主義が生まれた瞬間
第3章 海を渡ったカルヴァン派とアメリカの宗教政治
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第1章 巡礼 十字軍と中世経済を支えたもの
第2章 北方十字軍 「ヨーロッパ」の東方拡大
第3章 東方植民とダンツィヒの悲劇
第5部 シルクロード――「帝国の墓場」アフガニスタンの宿命
第1章 ラピスラズリ 世界を魅了したアフガニスタンの「青」
第2章 シルクロードの中継地 アフガニスタン
第3章 アフガニスタンのイスラーム化
第4章 アフガニスタン王国の夜明けとパシュトゥーン人
第5章 アフガニスタンをめぐる帝国の攻防
第6章 二度の世界大戦と王政の崩壊
第7章 帝国の墓場、アフガニスタン
第6部 内陸交通路――もう1つの東南アジア史を読む
第1章 東南アジアの隠れた要衝、ラオス
第2章 第2次世界大戦とベトナム戦争
第3章 ラオス再評価「一帯一路」の中継点として
第7部 大河と資源――コンゴが変えた世界史
第1章 コンゴ王国 奴隷貿易が変えた中部アフリカ
第2章 コンゴ探検が生んだ植民地支配とウラン資源
第3章 コンゴ動乱 独立が生んだ冷戦と資源紛争