『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第81回では、 ビジネスにおける「期待」とモチベーションの関係について解説する。
外資系ファンドの猛者が考える「相手を支配するための方法」
外資系ファンド・サンデーキャピタルによる買収を阻止すべく、あえて創業社長・花岡拳の解任の是非を問う臨時株主総会を開催した新興アパレルメーカー・T-BOX。会場で司会を務める役員・大林隆二が花岡の解任についての議題を読み上げるやいなや、株主からは「(花岡は)T-BOXの顔だろ。やめたらどうなる!」「花岡社長以外ありえないだろ!」と怒号が飛ぶ。
そんな中でサンデーキャピタルの福沢ウイリアム太郎が手を挙げる。そして、外部資本との提携を拒否する花岡に対して解任を求めた役員会の考えを支持し、「花岡社長にはT-BOXから即刻立ち去っていただきたい」と要求。
さらには、製造部門の役員・片岩八重子(ヤエコ)が活躍しきれていない、同じく役員の日高功が担当する中国事業には投資が足りないと説き、役員陣に揺さぶりをかける。
福沢は相手を支配する方法として、「まず脅す!恐怖心を抱かせる。そして与えて、甘やかして、骨抜きにする!これが侵略の第一歩なのさ」と心の中でつぶやく。
世界進出を夢見るヤエコや、中国事業を担う日高に揺さぶりをかけつつ、外部資本を受け入れる意義を説き、自分たちに賛同させようというわけだ。まさにアメとムチというわけだ。
「期待」で人を動かすために必要な3つの要素
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
福沢の言葉に揺れるヤエコたち。だが実際「このままでは、望む未来を実現できない」という感情は、人の行動を大きく動かすことがある。
かつて経営学者のヴィクター・ヴルームは、人々のモチベーションについてまとめた「期待理論」の中で、人が行動を選択する理由には(1)期待:努力すれば結果につながるという見込み、(2)道具性:成果を出せば望むものを得られるという見込み、(3)誘意性:その報酬や結果が本人にとってどれだけ魅了的か——の3点が重要だと説いた。
福沢の提案もこうした期待理論の考え方から読み解くことができる。ヤエコたちには世界進出や中国事業の成功という望む世界があり、それに向けて努力している。だが今の体制ではその未来には届かない。ならば外部資本を受け入れてはどうかと心が動いたのだ。
これは、キーパーソンの採用に向けた「口説き文句」としても有用だろう。その人が望む未来を見抜き、それが実現できるのは今あなたがいる会社ではない。自分たちの会社である——そんな言葉で心が動くことは少なくないだろう。
さらに追い打ちをかける福沢と、それに賛同し始める他の株主たち。窮地に陥った花岡は反撃のタイミングを模索する。
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク







