中小企業の給与は
大企業の6~8割になる
OECDの統計では日本のデータがないが、中小企業庁「中小企業白書(2023年版)」では、大企業に対する中小企業の賃金比率は85.0%となる。これは製造業ではなくて、全産業のデータである。
ただし、中小企業白書で用いている「賃金構造基本統計調査」からわかる給与は、6月の給与(残業代を含む)を12倍し前年のボーナスを足したものであり、やや変則的である。そこで、ボーナスを含む年間の給与を調査している国税庁「民間給与実態統計調査結果」(2024年)から、以下のように中小企業賃金と大企業賃金を推定してみた。
国税庁統計では、事業所規模を1~4人、5~9人、10~29人、30~99人、100~499人、500~999人、1000~4999人、5000人以上と分かれている。99人以下を中小企業、100人以上を大企業として、それぞれの階層での平均給与をそれぞれの階層での人数でウェイトをつけて平均すると、大企業に対する中小企業の賃金の比率は83.3%となる。
すなわち、どちらの調査でも、日本の中小企業賃金の大企業賃金に対する比率は8割以上となる。
しかし、厚生労働省「毎月勤労統計調査」で、従業員100人以上を大企業、5~29人、30~99人を中小企業として計算すると、格差は拡大し65.6%となる(注1)。
ただし、中小企業では、短時間のパートタイム労働者が多く、これが格差を拡大する要因となっている。時給にすると72.3%、パートを除く一般労働者のみとすると76.9%にまで格差は縮小する。
中小企業と大企業の格差のかなりの部分はパート賃金が安いことから生まれている。すると、格差縮小策は、中小企業保護ではなくて、同一労働同一賃金の徹底かもしれない。
「大企業の8割」という
数字をどう解釈すべきか
『政府支出を考える』(原田 泰編著、井上智洋編著、中里 透編著、金融財政事情研究会)
日本の中小企業と大企業の賃金格差が、国際的にみて小さいことをどう考えたらよいのだろうか。もちろん、6割から85%までのどれをとるかで結果が異なるのだが、中小企業庁は85%を格差としている。もちろん85%でも格差があるのは事実だが、日本の大企業と中小企業の賃金格差は、欧州や韓国と比べて小さいということになる。
これは、日本の中小企業の賃金が低いという、さんざん聞かされてきたこととは異なる。これをどう解釈したらよいのだろうか。
統計が間違っている、あるいは、適切ではないデータをもってきたとも解釈できる。たとえば、5人以下の零細な企業は除かれているという問題がある。だから、労働生産性の違いからみても、賃金格差がこれほど小さいはずはないと考えることも可能である。
しかし、零細企業のデータをとるのがむずかしいことはほかのOECD諸国でも同じだろう。







