こうした考え方や行動の特性を持つ人への対応についての相談も、近年とても増えています。

 援助をしていた人の気持ちやその人との関係性が時間の経過とともに変化し、このタイプの人をより追い込んでしまう問題が生じやすいことも報告されています(注2)。

 今回の相談でも、この「関係性の変化」によって状況が悪化しました。

 この「関係性の変化」を理解するうえで役立つのが、ステファン・カープマン医師(精神科医)によって提唱された「ドラマ・トライアングル」という理論です(注3)。

 これは、機能不全を招きやすい対人関係において、「迫害者」「救助者」「犠牲者」という3つの行動上の役割が無意識にとられ、それらの役割の入れ替わりやそれに伴う感情の逆転(emotional reversals)が繰り返されやすいことを示したものです(注3)。

 先ほどのケースで起きていたことを、この理論を使って状況整理してみましょう。

「支えてあげられるのは私だけ」
という思いだけで突っ走らない

 最初、相談者はBさんに慕われ、頼られていました。相談者は「力になってあげたい」と思い、「救助者」の役割を担います。その後、相談の頻度も量も増え、内容も深刻化していったある日、忙しさから相談に応じきれなかったり、仕事上の注意をしたりしたことで、Bさんは相談者に「拒絶された」と感じ、深く傷つき、攻撃してくるようになったのです。

 つまり、相談者は「犠牲者」(Bさん)を助けていた「救助者」だったはずが、「迫害者」(Bさん)から攻撃される「犠牲者」へと、気づかないうちに役割が交替してしまったのです。

「こんなはずではなかった」と困惑した相談者は、「なんて困った新人なんだ!」と援助の手を放します。Bさんは相談者から見捨てられたことにより、さらに困った状況に陥りました。今度はBさんが「犠牲者」に、相談者が「迫害者」になってしまったわけです。

(注2)藤里智子「職場におけるパーソナリティ障害への対応方法~企業内心理職の役割~」第92回日本産業衛生学会シンポジウム15職場におけるパーソナリティ障害への対応方法(座長:西田友厚・巽あさみ)、2019年。

(注3)Karpman S. Fairy tales and script drama analysis. Transactional Analysis Bulletin. 1968; 7(26):39-43.