専門の壁を越える「対象の広さ」が武器になる

さらに、小林秀雄から学ぶべき最大のノウハウは、自分の専門領域に閉じこもらない「越境する知性」です。

小林は日本において本格的な近代批評を確立した人物として評価されていますが、すごいのは評論する「対象の広さ」です。文学や小説、詩を解釈するにとどまらず、音楽や美術など、幅広く論じてきました。
――『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』より

現代のビジネスでも、イノベーションは「異なる分野の掛け合わせ」から生まれます。デジタルの専門家が歴史を学び、営業担当者がアートに触れる。

一見関係のないジャンルに興味を持ち、多角的な視点から物事を解釈する「幅の広さ」が、変化の激しい時代を生き抜く強力な武器になるのです。

時代を先読みする「インフルエンサー」としての眼力

そして、本質を見抜く力はビジネスにおける「先見の明」へとつながります。小林は、当時まだ日本での評価が定まりきっていなかった芸術家たちの真価をいち早く見抜いていました。

かの有名な音楽家・モーツァルトを、日本で初めて本格的に批評したのも小林です。絵画「ひまわり」で有名なゴッホや、現代アートに大きな影響をもたらしたピカソなどの芸術家についても、かなり早い段階で評論しています。
――『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』より

世間が「良い」と評価してから便乗するのは簡単です。しかし、自分自身の確固たる価値基準と教養を持っていれば、まだ誰も注目していない段階で「本物」を発見することができます。

これは、新規事業の立ち上げや有望な投資先を見つける際にも通じる、極めて実践的なビジネススキルといえるでしょう。分野の壁を越えて「一流」に触れること。それが、本質を見抜く目を持つための最短ルートなのです。