新宿エリアと大丸有エリアでは、通勤者数はほとんど変わりません。にもかかわらず、なぜ、新宿の通勤圏は「狭く」、「23区西部に偏っている」のでしょうか?

 その理由としては、両エリアの企業や働く人の特性の違いが考えられます。

「大丸有エリア」は日本の民間企業の「司令塔」とも言うべき地域です。金融、専門商社、大手メーカーといった日本を代表する企業の中枢機能が集積し、経営、企画、財務、法務などの専門人材が集まっています。

新宿は23区西部・多摩の
「地域拠点」になっている

『データでわかる東京格差 数値の「可視化」で真実をあぶりだす』書影『データでわかる東京格差 数値の「可視化」で真実をあぶりだす』(にゃんこそば、SBクリエイティブ)

 これに対し「新宿エリア」は、23区西部や多摩地域に住む人たちの働き口や外出先として、いわば「東京ローカル」の地域拠点としての機能を果たしています。

 総務省統計局「令和3年経済センサス-活動調査」によると、大手町から丸の内、有楽町にかけての東西1km、南北1.5kmほどの範囲に「常用雇用者(注1)5000人以上」の企業の本社が35社あります。

 金融業・保険業(三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループなど)、製造業(三菱電機、日立製作所、古河電気工業など)、商社(三菱商事、三井物産、住友商事など)などがその一例です。

 一方、新宿エリア(西新宿を中心とした東西1km、南北1.5kmほど)では、従業者数は大丸有エリアと大差ないものの、「常用雇用者(注1)5000人以上」の企業が20社と少なく、労働集約型の多様なサービス機能や行政機能が集まっています。

 業種・職種もITサービスや営業、接客(飲食、小売)など多岐にわたり、こうした人材の多様性が新宿の活気を形づくっています。

 このように、広範囲から人を集める大丸有エリアと、23区西部・多摩地域のいわば「県庁所在地」としての役割を担う新宿エリア。同じエリアでも、そこに集う「人」が異なれば、通勤圏の形も大きく変わってくるのです。

東急線沿線は本当に
渋谷のベッドタウンなのか

「大丸有エリア」、「新宿エリア」と並んで働く人が多いのが、港区、品川区、目黒区などの「山手線南側エリア」です。

 山手線(目黒~品川~新橋)をはじめ、半蔵門線、銀座線、日比谷線などの沿線にオフィス街が形成され、23区の「城南エリア」や川崎市、横浜市方面から多くの通勤・通学客を集めています(図6)。

図6 港区・品川区・目黒区への通勤・通学率(2020年国勢調査)同書より転載 拡大画像表示

 興味深いのは、都内の東急線沿線住民が、勤務地として渋谷、新宿よりも「山手線南側エリア」を選ぶ傾向が強いことです。

 東急では渋谷-二子玉川-自由が丘を結んだエリアを「プラチナトライアングル」と呼び、職・住・遊の機能強化を通じて情報感度の高いクリエイティブ層(住む人、働く人)の呼び込みを図っていますが、その裏側には、渋谷が沿線住民にとってさほど強い求心力を持ち得ていないことへの危機感があるのかもしれません。

 渋谷駅前の再開発(2030年代前半に完了予定)の進展が待たれます。

(注1)無期または1カ月以上の期間を定めて雇用されている人。