「看護」って何だろう →答えがようやく見えてきた?〈風、薫る第129回〉『風、薫る』第129回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラに関する著書を2冊出版し、毎日レビューを続けて12年めの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は第129回(2026年9月24日放送)「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)

卯三郎の言う「リターン」を「恩送り」へと転換

 あと2回。りん(見上愛)が看護の本を書くことを決意する。

 なかなか「看護とは何か」わかりやすい言葉がみつからず考え続ける日々。観念的なことばかり浮かんできて、直美(上坂樹里)は「それじゃあ本にならないし売れない」と言い出す。

 第129回では、国全体を考える役人・柳生(中村倫也)と、患者一人一人のために奔走する看護婦・りんや直美。立場が違えば考え方も違い、ときには対立する者同士、どのすれば分断しないで共生できるか問題提起がされた。

 りんは本の執筆をしないかと、直美を誘う。

「今までいろんな人に助けてもらってきたから、私も返したい」。本を書く理由をりんはそう語る。

 返す、つまり「リターン」。卯三郎(坂東彌十郎)が再三言っていた「リターン」をりんがついに払うときが来た。

 だが、もう卯三郎は出てきそうにない。実在の清水卯三郎は1910年(明治43年)に亡くなっている。ドラマではまだ1910年まで進んではないようだが、おそらく彼が出てくることはないだろう。

 りんの「リターン」は卯三郎への「恩返し」ではなく、ほかの誰かへの「恩送り」に使われる。

 一般に言われるのは、恩人に返すのではなく、助けてもらった自分が今度は次の人を助ける「恩送り」が理想ということだ。もちろん恩返しもやってはいけないわけではない。だが恩送りのほうが未来への好循環である。

 りんが想定する読者は、養成学校の生徒のみならず、かつて那須にいた自分や父のような人たち、あとに続く看護婦たち。

 伝染病がどこかで流行ったとき、街の人、村の人、看護する人にも読んでほしいと直美。

 いまでいう一般の人も使える家庭医学書みたいなもの。専門家にも使えて、一般人も日常参考になるもの。

 ちょっとした応急処置の仕方などが書いてあるものがあればとても助かる。

 実際、りんのモデルである、大関和は1908年に『実地看護法』を出し、それは家庭医学書として、看護従事者のみならず一般人にも普及したと、『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる著)に書かれている。