「産業の保険」と「個人の保険」
柳生もまた、直美のやってきたことは評価している。無償看護は、ある大臣が考えている国の社会保険という制度に近く、大変勉強になったと。
またそんな情報提供しちゃっていいのか。相手は直美だよ?
それはともかく、柳生の机には「農業保険論」という本が置いてあった。
ドイツのポウル・マイエットが書いたもので、1890年(明治23年)に出版されている。
農業保険とは、自然災害による収穫量の減少や、市場価格の下落による収入の減少など、さまざまなリスクに備えるための国の公的保険制度だ。柳生は早くも、個人ではなく、産業に対する保障に思いを馳せているようだ。
農業保険は、昨今頻発する自然災害や不況において、必要な制度であろう。日本における「農業保険法」は1939年(昭和14年)に施行され、1947年(昭和22年)に農業経営の安定と生産力の発展を目的として制定された「農業災害補償法」を経て、現在の「農業保険法」に至る。
個人の保険はどうだろう。
いわゆる公的保険は、1922年(大正11年)、日本で最初の公的医療保険制度である「健康保険法」が制定された。施行は1927年だ。そして、工場などで労働する者を対象とした「職域保険(被用者保険)」が始まる。
社会制度として確立するまえに、民間で生命保険が誕生している。保険会社のアフラックのサイトにはこうある。
「明治14年(1881年)に福沢諭吉の門下生である阿部泰蔵が日本初となる保険会社を創設しました。これが『明治生命』です」
「明治25年(1892年)頃には各地に生命保険会社が誕生しました。多くの保険会社が登場したことで法的な整備も必要となり、明治33年(1900年)にはドイツの保険監督法にならって『保険業法』が制定され、政府の取り締まりが開始されたのです」







