そして、なぜ自分はこうなんだろう、あの時のあの出来事が原因かもしれないと答えの見つからない原因探しを繰り返すうち、ネガティブな記憶や感情を何度も思い出す、「反芻思考」を引き起こし、うつうつとした気分を自ら強めてしまうのです。

 さらに、あの人のあの発言が原因かもしれないと不確かな仮説を立てると、「確証バイアス」が働き、自分の仮説に合致する情報ばかりに目が向く可能性があります。

 最初はぼんやりとした体調不良だったものが、反芻を重ねるうちに〇〇さんが悪い、この職場が悪いという強固なストーリーへと変化し、本来の理由とは異なる思い込みに支配されていくことにもなりかねません。

 上司が原因を解決してやると腰を上げても、仮に、原因が体調不良や疲労にある場合、本人のモチベーションは回復しません。それどころか、人間関係がぎすぎすしたり、自分はこの仕事に向いていないのではないかという誤った結論に誘導してしまう危険すらあるのです。

「解決思考」を横に置き、承認と今できるサポートを

 部下にやる気がないとき、上司は、原因を突き止めてすぐに元の状態に戻そうとする解決思考を一旦横に置きましょう。

 人間のモチベーションには波があって当たり前です。やる気が低下した状態を即座に異常と捉えてうろたえず、とにかく上司自身が冷静になることです。まずは、「仕事をしていると、どうしても気持ちが乗らない時期もあるよね」と気持ちに共感し、現状を承認する言葉をかけるのです。

 不調に悩む部下が求めているのは、多くの場合、アドバイスや激励ではなく、現状のままでも否定されないという安心感です。今の状態から引き上げようとするのではなく、人間だから調子に波があって当たり前、不調な姿を見せても大丈夫だという安心感を与えるのです。

 自分がありのままで承認されたと感じたとき、部下の罪悪感は和らぎ、回復へ向かうきっかけとなります。そして、不調の時期を乗り越えたとき、上司に自分の不調を隠さずに見せられた経験は、その後の信頼関係の強化にもつながります。

 そして次にすべきなのは、過去の原因探しではなく、現在と未来に向けたサポートの意思表示です。「今、引っかかっているタスクはある?」「少し業務量を調整しようか」「締め切りを延ばせるものがあるか確認しよう」といった具体的なサポートを申し出ます。

 過去の原因を追及するのではなく、今この場でできる現実的な負担軽減を一緒に考えることで、部下は反芻思考の渦から抜け出し、目の前の小さなタスクに落ち着いて向き合いやすくなります。

 上司は部下のモチベーションを調整する専門家ではなく、まして親でもスーパーマンでもありません。気づいた瞬間に、慌てて介入するのではなく、状況によっては冷静に見守るのもマネジメント力です。必要なら人事や産業医と連携を取りつつ、部下との長期的な関係を育んでください。

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