若者の投票率が下がると
社会保障の受給額も減る

 若者の将来の負担となる国の借金は、若者の投票率が下がると増えていくという計算ができたところで、今度は若年世代が政府から受け取る方の社会保障給付と投票率の関係に話を移そう。政府からの社会保障の項目は高齢者向けの支出、若者・子育て世代向けの支出(家族)、その他に分けられる。そこで、若者と高齢者の社会保障上での格差を、

 若者向け社会保障―高齢者向け社会保障

 として注目した。若者と高齢者の人口は毎年変化しているので、若者向け、高齢者向けの社会保障支出を総額でそのまま比較しても実態を正しくは表さない。なぜなら、毎年高齢者の人数は増えているので、1人当たりの社会保障支出は下がっていても、総額は膨らんでいくように見えてしまうからである。

 そこで、毎年の各世代への社会保障支出を、若年世代・高齢世代の人口で割って各世代の「1人当たりの社会保障受給」として実質的な変化を計算した。ここでも、投票率だけで社会保障支出のすべてを説明しきることは無理があるので、国債発行の方程式モデルの場合と同様に、図表2-9で示すように国内総生産や経済・社会のショックを取り入れた理論方程式を作り、計算をした。

図表2-9 社会保障受給格差を説明する方程式のイメージ同書より転載 拡大画像表示
『日本人全員が佐藤さんになる日』書影『日本人全員が佐藤さんになる日』(吉田 浩、朝日新聞出版)

 その結果、若者投票率と世代間社会保障受給格差の関係の値は、若者の投票率が1%下落すると、若者1人当たりの

 社会保障は高齢者より年間2万1494円減る

 というものであった。この理論方程式の計算結果が現実の値を言い当てられた割合は、9割8分程度である。

 以上を合わせると、若年世代が政治的無関心になって選挙の投票に行かないことで、投票率が1%下落すれば、高齢者に比べて社会保障でもらえる給付が2万1494円、将来の国債の負担で3万3744円の損となり、合計で年間5万5238円の損となる計算となる。

 これが選挙で投票権を放棄した分の損を金額で「見える化」したものである。