東証プライム上場社長で『「悩まない人」の考え方』などベストセラー著者の木下勝寿氏が「マーカー引きまくり! 絶対読むべき一冊」と絶賛する本がある。『スタートアップ芸人』だ。
この本の著者・森武司氏は、お笑い芸人からニートを経て起業。11事業で年商146億円、18年連続増収増益の会社をつくり上げた。本書に共感した株式会社アドバンスの品川瑞樹社長は、既存事業を役員に丸ごと任せ、自分は次の事業へ動こうとした。ところが2か月で、その役員は「もう無理かも」と追い込まれてしまったという。品川氏に任せ方のコツと本書の教訓を聞いた。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)
Photo: Adobe Stock
その事業を任せた理由
――権限委譲したものの、思ったように回らなかった。そんな経験はありますか。
品川瑞樹(以下、品川):ありますね。権限委譲は、めちゃくちゃ難しいです。
2024年11~12月頃に、既存事業の立ち上げを役員に任せました。受注や役務提供の状況もある程度整ってきていたので、私が抜けても回るようにしよう、私は新規事業の立ち上げに行こうと。採用も全部任せて、いわばその事業の「社長」ぐらいの感覚でやってもらおうと進めていたんです。
――かなり大きく預けたんですね。
品川:そうです。ところが、2025年1~2月ぐらいでパッとパンクしてしまって、本人が「もう無理かも」という感じになってしまいました。
原因は「能力」でも「時間」でもなかった
――何が足りなかったんでしょうか。時間か、人手か、それとも本人の能力か。
品川:時間は、決して余裕がなかったわけではありません。前提として本人はめちゃめちゃ頑張っていましたし、朝から晩までパワフルに動いてくれていて、私もすごく感謝しています。能力についても、タスクの量自体はこなせるはずの人でした。
――では、何が起きていたんですか。
品川:あれもこれもと任せたことで、頭の中がごちゃごちゃになってしまったんです。
やらなければいけないことがたくさんあると、「やらなきゃ、やらなきゃ」という言葉だけが頭に浮かんで、実際には何も進んでいない、ということが結構あるんですよね。処理能力ではなく、整理が追いつかなくなっていた。
――どう解決したんですか。
品川:私が入って、「ここで何をして、次はこれをして」とスケジュール管理をするようにしたら、できるようになりました。
ただ、当時の私にはタスク管理のマニュアルがなかったんです。属人化していた。そこが一番の問題でした。
「任せ方」で後悔していること
――振り返って、ご自身の判断で悔やんでいることはありますか。
品川:本人の「イケル」という言葉を鵜呑みにしすぎた、というのが正直なところです。
私自身も「できる」と期待していましたし、本人も「やります」と気合いに満ちあふれていた。でも蓋を開けてみたら、うまく機能していなかった。
――本人が「やれます」と言っている以上、任せるのが普通のような気もします。
品川:もしかしたら、期待をかけすぎたのかもしれません。あるいは、本人に「もういける」と言わせてしまっていたのかもしれない、とも思っています。
ストレートに言えば、役員としてやっているならそれぐらい自分で管理してほしい、という感覚も当時はありました。ただ、そう思う前に、任せるための仕組みを作るべきだったし、私ももっと早く気づくべきだったな、と。
――「立場が人をつくる」という考え方もありますよね。
品川:私もその考えを持っています。能力がまだ追いついていなくても、役割や責任を与えられることで人は成長すると思っています。
ベンチャーなので、全員が急スピードで成長していかなければいけない。ただ、そのさじ加減がすごく難しい。設立してまだ2年ほどなので、ここまでは任せられる、こういうシグナルが出たらエラーが起きる手前だ、ということがわからないまま決めているのが実情です。
後戻りのほうが時間がかかる
――失敗してでも任せたほうがいい、という考え方もあります。
品川:私も、任せたいし、成長してほしいし、別に失敗してもいいと思っているんです。
ただ、本人がパンクしてしまったり組織として機能しなくなると、前に進みたいのに一度後戻りしなければいけなくなる。今回も、体制の立て直しに半年ほどかかりました。止まっている間のコストのほうが、実は大きいんですよね。
――その事業は、今どうなっているんですか。
品川:2026年7月から、もう一度スタートすることになりました。顧客への役務提供も、営業支援もコンサルティングも、私がいなくても機能するようになってきています。
受注数も2倍になりました。これは、そのメンバー自身の頑張りによるところがすごく大きいです。そのおかげで私は現在、新規事業の営業の最前線に立てています。
――本書には「仲間を成長させる章」がありました。
品川:森社長も、役員に任せた事業で3000万円の損失を出したことがあるそうです。それでも見捨てずに向き合う姿勢に、読んでいて共感しました。うちも今回の件で、任せ方そのものを見直していきたいと思っています。「任せたいのに任せきれない」と悩んでいる方には参考になると思います。




