「ちゃんとやらなければ」と頭ではわかっている。それなのに、どうしてもできない――。発達障害の特性がある人のなかには、仕事でそんな壁にぶつかる人も少なくない。ADHD当事者で著述家の小鳥遊(たかなし)さんも、かつて興味を持てない仕事を任され、思うように対応できずに苦しんだ経験がある。ある日、仕事相手からかかってきた一本の電話。そこで言い放たれた強烈な一言とは――。『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』の刊行に寄せて、小鳥遊さんに自身の経験を寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)
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20年前のADHD診断で言われたこと
興味のないことに一日の大半を費やす。
これが、人によっては想像を絶する苦行になることがあります。
私は約20年前にADHDの診断を受けました。その診断にあたって受けた「心理検査」では、その検査を実施してくれた臨床心理士さんからこう言われました。
「小鳥遊さんは、知識に偏りがあるようです」
たとえば、あまり多くの人が知らないような難しい熟語を知っているかと思ったら、四国四県が言えなかったり、といった具合です。
そのやり取りを通じて、自分には「興味のあることとないことの差がかなり大きい」のだと意識するようになりました。
「誰でもそうなのではないか?」と思ったのですが、どうやら他のみなさんは適度に難しい熟語を知り、常識として四国四県が言えるようなのだと知り愕然としました。
「使えねぇな」という烙印
そんな私が、発達障害であることを開示せずに転職したある会社では、車両管理という業務を任されました。
全国に1,000台以上ある営業用の車を管理する仕事でした。
人員の配置によっては、営業所ごとに必要台数が変わってくるのでその調整をしたり、故障したり傷がついたりしたらその修理の手配もしなければなりません。
しかも、そんな膨大な情報をたった1つのエクセルファイルで手入力で管理していたのです。
私は運転免許を持っておらず、車には一切興味がありませんでした。
当時の上司からは、
「営業用の車のあらゆることをインプットしてきっちりやっていこう」
「クルマを好きになるくらい、仕事に積極的に取り組んでいこう」
とアドバイスやサポートをしてもらいました。
それでも、まったく身が入らず、
「営業さんが入ったから、営業車を手配してください」
という申請対応が後手に回りがちになりました。
しまいにはある営業所からクレームの電話がかかってきてしまい、
「使えねぇな」
とガチャ切りされる始末でした。
この一言は、今でも忘れられません。
頭では、「しっかり車両管理をしなければ」とわかっているのです。なのに、できない。
周囲から見れば、ただ怠けているようにしか見えなかったでしょう。
上司からはこの仕事から外され、代わりに私の部下がその仕事をするようになりました。
車両管理業務についての指示は、私を飛び越えて、私の上司から私の部下へ直接されるようになりました。上司としても、そうするしかなかったのだと思います。
「わかるけど、できない」
『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』では、お金に強い苦手意識がある人、(お金管理は大事だと)わかっていても上手にできない人に向けて、このような言葉を送っています。
――『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』P10より
「家計簿をつけよう」
分かっているんです。でも、「きちんとする」程度の解像度では、おそらく動けないのです。
「家計簿をつければ収支が分かる」はまったくもって正しいです。しかし、いくら正しくても、「家計簿をつけるとはどういうことか」がしっくり来ていないと、まったく自分ごとにならないのです。
おそらく、家計簿が付けられない人は「家計簿をつけよう」ぐらいではお金管理はうまくいかないでしょう。本書に書いてあるとおり、「記録を残し続ける」「大事なレシートをなくさない」ということにポイントを絞って対処する必要があります。
本書では、このような対処法が書かれています。
――『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』P79
実際、私はこれを読んでから、支払いをできるだけクレジットカードでするようにしました。明らかに、お金を管理するプレッシャーが減りました。
家計簿を自分でつける手間も省けて、そうなると逆にレシートをこまめに保管できるようになったのです。
「使えねえな」と言われた当時の自分に伝えたいこと
もし、本書のこの姿勢を冒頭の「車両管理」に持ってくるとしたら、まず「エクセルで手入力管理」という箇所にポイントを絞ったことでしょう。
その社用車はリース車両だったので、リース会社から管理システムが提供されていました。しかし、それをうまく活用できていませんでした。その後、私から車両管理業務を引き継いだ部下は早速そのシステムを自社用に使えるようにし、大きく改善をしていました。
しかし当時の私には、そのようなことをする気すら、起こりませんでした。
もし当時の私にささやくことができるのなら、
「エクセルに入力する頑張りは十分分かったよ。でも、辛いならもっと何か別のものに頼ってみようか」
と伝えることでしょう。
本書は、お金のことについてだけでなく、「わかるけど、できない」ことを抱えて苦しんでいる人に広く役立つ考え方を教えてくれます。そんな悩みを持つ人に、ぜひ手に取って欲しい一冊です。






