年間100世帯以上の相談にのる発達障害専門のFPで、ADHD当事者でもある岩切健一郎氏が書いた『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』が発売中だ。本書には「ここまで寄り添ってくれるお金の本は初めて!」「お金に苦手感のある人は全員読んだ方がいい」など、発達障害の有無にかかわらず、多くの口コミが寄せられている。
本記事では、刑務所でお金について講演した著者がリアルな思いを綴ってくれた。(ダイヤモンド社書籍編集局)
※現在、正式な診断名は「発達障害」から「神経発達症」へ変更になっていますが、この連載では広く知られている「発達障害」という表現を用います。
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受刑者は出所後、どうやってお金と付き合っていけばいいのか
先日、市原青年矯正センターで講演をさせていただきました。
市原青年矯正センターは、発達障害や知的障害などの特性を伴う、26歳未満の男性受刑者を対象とした刑務所です。
社会に戻った後にお金で困らないために、私自身の実体験や、ファイナンシャルプランナーとして相談を受ける中で感じていることをもとに、お話をさせていただきました。
今回のきっかけは、私の著書『発達障害かもだけど、お金のことちゃんとしたい人の本』を読んでくださった、刑務所の支援員の方との出会いでした。
発達障害や知的障害のある方が、
出所した後にお金とどう付き合っていけばいいのか。
どう学べば、社会の中で再び困らずに暮らしていけるのか。
その方法を模索している中で、私の本を見つけてくださったとのこと。
打ち合わせの中で言われたのは、
「お金でうまくいかなかった過去のある岩切さんだからこそ、
話せることや伝えられることがあると思います」
ということでした。
お金の話は、知識だけの話ではないと日々感じています。
「なぜ自分はお金を使ってしまうのか」
「なぜ目の前のお金に飛びついてしまうのか」
「なぜ困った時に、危ない選択肢に手を伸ばしてしまうのか」
そこに向き合わなければ、本当の意味ではお金と付き合えるようになりません。
私自身も、お金でたくさん失敗してきました。
衝動的にお金を使ってしまうことや、見栄で浪費したこともありました。節約なんてカッコ悪いと勘違いをしていた時期もありました。
その結果が、
・消費者金融から200万円の借金
・リボ払い100万円
・奨学金滞納で裁判所への出頭
です。
そんな経験を踏まえて、今回の講演は金融教育ではなく、「お金で人生を破滅させないために、どんな風にお金と付き合うか」という話にしたいと思っていました。
施設の方のお話では、収容されている方は、暴力事件よりも、詐欺の受け子やかけ子、薬物に関することで捕まった方が多いとのこと。
被害者の方が存在するので、犯罪は許されるものではありません。
ただ一方で、お金が回らなくなった結果、危ない話に手を出してしまった人が多いのも事実です。
目の前のお金に困って、視野が狭くなってしまい、もうこれしかないと思い込んで犯罪に手を染めた人もいます。
だからこそ、お金の教育は本当に大切だと感じています。
「貧すれば鈍する」ぐらいであればまだよくて、貧すれば法も犯すレベルになってしまうと、取り返しがつきません。
刑務所は異様な雰囲気が漂っていた
今回、人生で初めて刑務所の中に入りました。正直、緊張感がすごかったです。
入り口では指紋認証。
どこのフロア、どこの棟に入るにも、厳重な鍵。
外部の人間である私は金属探知機を通ります。
施設内では刑務官の方が見回りをしています。
ものすごい閉塞感でした。
そして空気が重く感じました。
一切、音のない空間なので、一つひとつの扉が閉まる音や鍵がかかる音が響きます。勝手に緊張してしまってかなり消耗しました。
刑務官の方の掛け声とともに行進しながら、講演会場の体育館に入ってこられたのも印象的でした。
講演では、私自身の失敗談も交えながら話しました。
お金を使ってしまうのは、意志が弱いからだけではないこと、気合いではなく仕組みで守る必要があること。
身の丈に合った暮らしをすること、困った時に危ない話に乗らずに相談できる先を持つこと。
他人に奢りがちな人は、そのお金が居場所代になっていないか、なども伝えました。
ありがたいことに、講演中は笑いもありメモもたくさん取ってくれていました。
聞く姿勢も、とても真剣でした。
ただ、講演後の質疑応答の時間で、強烈な違和感を覚えたのです。



