養老 東京大学の解剖学教室に、小川鼎三さんという教授がいてね。ぼくの大師匠なんですが、この小川先生が定年前に「雪男が存在するかどうか、調べたい」と、「日本雪男研究グループ」を結成したんです。
柳瀬 実際に探検に行ったりしたんですか?
養老 もちろん。雪男の足跡を見つけやすい冬を選んで、ネパールの、米ソがまだ足を踏み入れていないクーンブ地域に足を運んで調査が行われました。この調査は新聞やテレビが主催し、文部省と日本山岳会が後援したくらいです。みんな大真面目です。当時、世界的にちょっとした“雪男ブーム”があったんですが、別にそれに便乗しようというのではなく、大真面目に「雪男を探そう」と。
「ああすればこうなる」で
世界は成り立っていない
柳瀬 今の大学で「雪男調査」と書いて申請しても通らないでしょうね。あえて無粋な質問をしますが、雪男の成果のほうは?
養老 知りません。雪男は見つからなかったんじゃないかな(笑)。
柳瀬 今だとますます怒られますね。でも行ってみないと、雪男がいないこともわからない。
養老 今は「わからない」こと自体を、人々が嫌う。「わからない」ことを恐れてますね。「人知をしてわからないことはない」という前提でものを考える。







