こんな老人ホームがあるのなら、入ってもいい。いや、入居して人生を終わりたいと思った。私の大好きな海のそばで、私と同じように音楽や映画、文学が好きな同世代の友人と酒を酌み交わし、夜が更けるまで語り明かす。そんな余生を送りたい。

「老人ホーム 海が見える」で検索してみる。おっと、凄い数だ。全国には200件以上の海の見える老人ホームがあり、そのうちの半数が入居者待ちだという。

施設を回るうちに、気が滅入る…
老人ホームの現実を知る

 まだ介護を必要としない私が見にいったのは「入居時自立型」の「介護付き有料老人ホーム」。海の見えそうな施設が神奈川に数件あった。

 神奈川の海は、東京から90分もあれば行けるので、茅ヶ崎、江の島、鎌倉は私のお決まりの散歩コースだった。コロナ禍前は2カ月に1度は行っていた。

 ひさしぶりの遠出、懐かしい潮風。やはり海はいい。今回は、施設のある三浦半島まで足を延ばす。

 結論から言うと、やすらぎの郷は見つからなかった。海から離れたところに建っていたり、船着き場しか見えなかったり。窓から海を一望できるような施設はなかった。

 そしてどこも老人と病人ばかりだ。杖をつく人、手押し車で歩く人、車椅子を押してもらう人。鼻にチューブを挿している人、ストレッチャーで運ばれていく人もいる。施設を回るうちに、気が滅入ってきた。

 私は血圧がちょっと高いのと坐骨神経痛があるくらいで、体は元気なのだ。テニススクールにも週2回通っている。こんなところに入ったら一気に老け込んで、二度と出られなくなる。

 私が見学しているのは「自立型有料老人ホーム」の施設。誰の手も借りず、みんな自立しているはずなのに、これが老人ホームの現実なのか?

 70歳になるまで3度、ピースボートで旅をした。国際交流を目的として設立されたNGO団体ピースボートは、大型客船による世界一周クルーズを企画している。この乗客のなんと7割が60歳以上なのだ。だから「動く老人ホーム」とも呼ばれる船内では、お年寄りがやたらと目につく。

 サークル活動も盛りだくさんで、絵画や書道、ヨガに太極拳、テニスや体操、ウクレレにフラダンス等々、カルチャーセンター顔負けのラインナップだ。