高齢になると、安全で快適な暮らしと、専門的なケアや医療サポートを提供してくれる老人ホームが終の住み家の選択肢として浮上する。一口に老人ホームと言ってもさまざまな種類と特徴がある。特集『終の住み家の選び方』(全21回)の#10では、主な12タイプについて特徴と費用を解説する。(週刊ダイヤモンド編集部論説委員 深澤 献)
民間型の高齢者向け施設は
要介護でなくても入れることも
もし、介護が必要になったら、現実的な「終の住み家」として選択肢に挙がるのが高齢者向け施設。いわゆる老人ホームだ。
一口に老人ホームと言ってもさまざまな種類と特徴がある。まずは、ざっくりと「公共型」と「民間型」に分けられる。
公共型の代表格が、「特別養護老人ホーム(特養)」だ。介護を必要とする65歳以上で、在宅介護が困難な人が暮らす施設で、高齢者向け施設では最も歴史がある。税金や介護保険料といった国民のお金を中心に運営しているため、利用料は民間の施設に比べて安く、誰でも利用する権利がある。ただし、医療的なケアが常時必要な人は入居できない場合があり、病院への入院が3カ月を超えた場合も、原則として退去となる。
地域によっては待機者が大勢いることが問題になっていたが、2015年に入居条件が要介護1以上から3以上に引き上げられたことにより、毎年、定員の3割近くが退去するようになり、かつてに比べるとかなり入りやすくなっている。
公共型には、病院から退院後に在宅復帰を目指し、リハビリなどを行う「介護老人保健施設」や、医療と介護を長期的・一体的に提供する「介護医療院」などもあるが、いずれも「住まい」としての利用を想定したものではない。
一方、民間型で代表的なのが、「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」だ。
いずれも、介護の必要がない人でも利用できる。その意味では、いざというときの介護サービスが付帯した高齢者向けの安心な住まいとして考えることもできる。
次ページでは、高齢者向け施設のそれぞれの特徴と、気になる費用について一覧表で解説する。特に老人ホームの料金体系は独特かつ複雑なため、注意すべき点も多い。