中央銀行の鉄則を越えた
異次元緩和の大きな転換
鉄則の主なものは、第1に国債を買い取ることで財政規律を失わせる「財政ファイナンス」をしてはならないこと、第2に中央銀行の資産の健全性を守ること、第3に個別企業・産業を有利にするなど資源配分に介入しないこと、である。
第2のリスク抑制のため、資産は、信用度、市場性が高く、短期で、元本保証があることが望ましい。株式などリスク性資産は避ける。国債は、第1の原則のためにも過度の大量保有をせず、短期の(満期まで短い)ものを主とする。金利の調節も短期を対象にする。
長期金利は短期金利から波及させることができるのみで、直接操作はできない(巨大な海にバケツで水を出し入れするようなものだから)。
これらが根本的に転換するのが2013年4月であり、ここにはっきりした断層がつくられた。
以降の異次元緩和では、国債(長期国債に重点)を総発行高の半分以上まで大量購入し、リスク性資産(ETF=株式投信、J-REIT=不動産投信、社債、CP)も大量購入し、マイナス金利を導入した。長期金利の操作も実施された。市場の半分までも保有することで、常識に反することが可能になったのであった。
最初の2年での公約未達成(2015年)ののち、撤退ないし縮小の機会は、日銀が「総括的検証」を行なった16年、黒田東彦総裁の一期目が終わった18年などにあったと思われるが、10年間継続された。政治的環境の事情もあったが、やめると国債暴落などの混乱の恐れも見込まれ、やめるにやめられないところに追い込まれたといえるだろう。
この結果、負の遺産が積み上がった。
国債大量保有で積み上がる
日銀と金融機関のリスク
黒田総裁退任の2023年3月時点において、国債保有高は582兆円で総残高1027兆円の57%を占め、含み損が10兆円であった(日本銀行・第138回事業年度決算)。
22年12月の雨宮副総裁(当時)の国会説明では、長期金利1%ポイント上昇で損失29兆円、2%ポイントで53兆円とのことである。
日銀は時価会計を免ぜられているので、顕示的に債務超過になり破綻することはない制度だが、含み損はある。売却すれば損失は顕在化する。







