ビジネスパーソンに必須!経済&ビジネスの最重要キーワードPhoto:JIJI

連載『ビジネスパーソンに必須!経済&ビジネスの最重要キーワード』の今回のキーワードは「実質金利」です。日本銀行は政策金利を1.25%に引き上げました。それでも植田和男総裁は「緩和的な金融環境は維持される」と説明しています。そのカギを握るのが、名目金利から物価上昇率を差し引いた「実質金利」です。金利と物価の関係から、利上げ後も金融環境が緩和的とされる理由を解説します。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

政策金利は31年ぶり1.25%
でも 「緩和的」なのはなぜ?

 今回のキーワードは「実質金利」です。

 日本銀行は9月17、18日に開いた金融政策決定会合で、政策金利を1.00%から1.25%に引き上げることを決めました。1995年以来、約31年ぶりの高水準です。

 政策金利の引き上げは、銀行の貸出金利を押し上げ、変動型の住宅ローンや企業の借入金などの金利上昇につながります。家計や企業の利払い負担を増やす一方、預貯金の金利を押し上げる方向にも働きます。

 中央銀行が利上げする主な目的の一つは、家計や企業がおカネを借りるコストを引き上げることで消費や投資を抑制し、需要を鈍化させて物価上昇を抑えることです。

 一般に、中央銀行が金利を引き上げることを「金融引き締め」、反対に金利を引き下げることを「金融緩和」と呼びます。

 ところが、今回の日銀の説明には一見すると矛盾ではと思うところがあります。

 日銀は政策金利を引き上げた一方で、「政策金利の変更後も、緩和的な金融環境は維持される」としています。利上げしたにもかかわらず、なぜ金融環境は「緩和的」なのでしょうか。

 そのカギを握るのが、今回のキーワードである実質金利です。

 私たちが普段目にする政策金利や預金金利、住宅ローン金利など、表示されている金利を「名目金利」といいます。これに対し、物価上昇の影響を取り除いた金利が実質金利です。

 簡単に表すと、実質金利≒名目金利-物価上昇率となります。8月の生鮮食品を除く消費者物価指数は前年同月比1.7%上昇しました。政策金利1.25%から1.7%を単純に差し引くと、実質金利はマイナス0.45%となります。

 ただし、これは実績の物価上昇率を使った簡便な計算です。金融政策を考える際に本来重要なのは、将来の予想物価上昇率を差し引いた実質金利です。将来の予想物価上昇率を算定することが難しいので多くのケースで、実績の消費者物価上昇率で計算されています。

 日銀は、政策金利を引き上げた後も短中期の実質金利がなお低い水準にあることに加え、企業の資金需要が増加し、金融機関の貸し出し姿勢も積極的であることなどから、金融環境は引き続き緩和的だと判断しています。

 次ページでは、実質金利が低いとなぜ景気を刺激する方向に働くのか、そして日本の実質金利がこれまでどのように推移してきたのかを見ていきます。