ADHD(注意欠如多動症)の当事者で、ASD(自閉スペクトラム症)とADHDの2人の娘さんをもつなちゅ。さん。新刊『ADHDの母が伝えたい 生きづらい女の子が覚えておきたいこと』では、子どもから大人まで一生使える具体的な対応策を伝えている。今回のテーマは、生活音。自分では気づけない「うるささ」に、どう手を打つのか。著者に話を聞いた。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局、イラスト/武者小路晶子)

不快Photo: Adobe Stock

まずは「自分がうるさいこと」を自覚しよう

――なちゅ。さんは今回の著作で「生活音」について、一項目を割いて書かれています。

なちゅ。:私たちのような、多動傾向のある人って、基本的にうるさいんですよ。四六時中バタバタガタガタ、もぞもぞ動く、バサバサ探し物をする。

多弁が加われば口もうるさいし、テンションのアップダウンも激しい。見た目が派手なら、見た目までうるさい。生きざまのすべてがガチャガチャしてるんです。

――それは、直すべきものでしょうか。

なちゅ。:いえ、やかましいこと自体が、常に悪いわけではありません。身振り手振りで話すことも、テンションの高さも、多弁も多動も、場面によっては武器になるし、魅力でもある。

だから、必死に消さなくていいんです。必要なのは、「自分はうるさい」という自覚と、場面の意識だけだと思っています。

――そもそも、なぜ音が大きくなるのでしょう。

なちゅ。:いくつか理由があります。

ひとつは、一つひとつの動作が雑で、手を離すのが早いこと。もうひとつは、「これくらいでいけるだろう」という見通しが現実とズレて、物を「ドン!」と勢いよく置いてしまうこと。

あと、ボディイメージの弱さから、自分の体の大きさがわかっておらず、あちこちぶつかって音を立ててしまうのも「あるある」ですね。

――自分では気づきにくそうです。

なちゅ。:気づきにくいです。でも、周囲の人にとって、予期せぬ大きな音やドアの開閉音は、不快感やストレスの元になりますから。

意識するのは、3つの筋肉

――どう対策すればいいのでしょう。

なちゅ。:最大のコツは、「体の節々の筋肉を意識する」ことです。今よりほんの少しだけ、でいいんです。

物を置くときは、ギリギリまで手を離さない。これは腕の筋肉です。かかとでドスドス歩かず、つま先から着地してクッションを効かせる。これはふくらはぎ。くしゃみが出そうになったら、下半身に意識を集中させる。これはお腹の筋肉ですね。

――くしゃみは、ほかにも方法がありますか。

なちゅ。:ひじやタオルで押さえるのが、公衆衛生上の基本です。そのうえで、鼻を軽く押さえると音が小さくなります。

ただし、強くつまむと耳や喉を痛めるので、あくまで軽く。あとは、鼻をかむときは場所を変える。これも慣れるまで練習してみてください。

「自由に過ごしていいよ」は、「爆音OK」ではない

――場面の意識、というのは具体的には。

なちゅ。:たとえば職場で「お昼の時間は自由に過ごして大丈夫だよ」と言われたとします。そこで爆音で動画を観てしまう、みたいなことが起きるんですね。

「自由にしていいよ」イコール「爆音OK」ではない。でも、言われたとおりに受け取ってしまう。自由に、の解釈は、意外と難しいんです。

――そこは線を引いておくと。

なちゅ。:静かにしているつもりでも、うるさい。まずそれを自覚したうえで、音量だけは常に配慮ラインを守る。そう決めておくほうが早いです。

自分を作り替えるより、環境を選ぶ

――それでも無理な場面はありそうです。

なちゅ。:音量を下げるのが難しいなら、静かな場所に行かない、という選択もアリだと思っています。

私は、仕事選びの段階から静かすぎるオフィスを避けています。同じオフィスワークでも、会社のカラーは全然違いますから。にぎやかさが活きる職もあるので、「うるさくても許される環境」のほうを取りに行く。

――避けられない場面では。

なちゅ。:葬儀のように、静かに長時間過ごさなくてはいけない場面もありますよね。そういうときは、できるだけ離脱しやすい場所、ドアのそばを確保しておきます。

自分を静かに作り替えるより、環境を選ぶほうが、ずっとラクで、ずっと続きます。

[著者]
なちゅ。
1980年生まれのワーキングマザー。発達障害(ADHD:注意欠如多動症)当事者。中学生と高校生の娘、そして夫も発達障害の特性を強く持つ。長女の発達障害診断をきっかけに、発達障害やそれに関連する分野の独学を開始。以来15年以上、自らの発達障害や子育てについてXを中心に情報発信を行う。仕事でも、障害福祉分野でマネジメント担当をしながら、個人事業主として講師業やスタートアップのサポートに従事。なかでも、自身の経験を活かした発達障害の親子のケアに力を入れている。

[医療監修]
本田秀夫(ほんだ・ひでお)
医師・信州大学医学部教授
1988年東京大学医学部卒。医学博士。専門は発達精神医学。信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 教授。信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部 部長。長野県発達障がい情報・支援センター「といろ」センター長。