彼らは競争を好まないと口にするが、熾烈な入試や就職活動の関門をくぐるためには誰よりも戦略的に努力を重ね、面接では企業が求める「模範的な社員像」を見事に演じきる。
入社後も社内の序列を真っ向から否定したり、上司に食ってかかったりするような蛮勇を見せることはまれだ。むしろ共同体の厚い壁にぶつかって傷つく前に、あらかじめ「自己抑制」という名のプロテクターを装着し、波風を立てないよう細心の注意を払っている。
そこに垣間見えるのがコロナ禍の影響だ。彼らの多くはコロナ禍の最中に入学、就職したものの自宅待機を余儀なくされた。そのため学校や会社で温かく迎えられ、先輩や新入生、新入社員どうしが仲間になる貴重な機会を逃してしまった。
それが対人関係の土台をつくる経験の不足につながり、その影響を現在まで引きずっていると指摘され、「コロナ世代」「コロナ新卒問題」などと呼ばれることもある。
「退職代行」が
幅をきかせる背景
それをうかがわせる象徴的な現象が、近年急増している「退職代行」や「内定辞退代行」の利用だ。直接、面と向かって意思を伝えるストレスから逃れるために、数万円を払ってでも他人に代弁してもらう。これは「対面での摩擦」や「関係性の否定」という不快な空気に対する極端なまでの脆弱性、あるいは耐性の欠如を示しているのではないか。
また「タイミー」などのプラットフォームを利用して働くギグワーカーが急増している背景にも、面接やシフト交渉など依頼主と交渉しなくてよいという理由があると言われている。
それほどまでに、彼らは目に見えない「空気」や人間関係の呪縛に陥っているのだ。
職場での付き合いに関しても、マスコミの報道などで描かれるイメージと実態には開きがある。彼らが飲み会を拒否しているとされる一方で、実際には「周りが参加するなら、自分だけ外れるリスクは負えない」と、内心の不満を押し殺して顔を出す者が大半だ。
その鬱憤は匿名でSNSに吐き出す。かつての世代が居酒屋で上司の不満をぶつけ合っていたエネルギーは、今やSNS上に移った。
SNSはいわば「Z世代の居酒屋」なのだ。







