現実の世界で従順な組織人を演じるぶん、その裏側にある匿名空間で感情を爆発させる。しかし、それは現実の組織風土を何ら変えるものではない。むしろ「外で吐き出せる場」があることが職場での従順さを倍増させるという皮肉な結果を招いている。

加速する「内向き」と
「年功序列」への回帰

 Z世代の体制順応的で、かつ内向きの体質は各種意識調査の結果にも表れている。

 文部科学省が2017年に行った「高等学校等国際交流状況等調査」によると、海外に「留学したくない」という生徒は63.2%で、「留学したい」という生徒(36.8%)を大きく上回る。

 また内閣府が2018年に日本や欧米など7カ国の13~29歳男女を対象に行った意識調査では、「外国留学をしたいと思わない」という回答が53.2%と7カ国の中で突出して高い。

「内向き」の意識は入社後も変わらず、産業能率大学が行っている「新入社員のグローバル意識調査」(2017年)によれば、「海外で働いてみたいとは思わない」という回答が60.4%に達している。

 さらに驚くべきなのは、彼らの「安定」への執着だ。同大学の「2025年度新入社員の会社生活調査」では、年功序列的な人事制度と成果主義的な人事制度のどちらを望むかを聞いているが、「成果主義」「どちらかといえば成果主義」が合わせて43.6%だったのに対し、「年功序列」「どちらかといえば年功序列」の合計が56.3%と、初めて過半数を占めた。

 不安定な経済状況を目にしながら学校生活を送ってきた彼らにとって、挑戦して敗れるリスクよりも、組織の階段をゆっくりと確実に上っていく「予測可能な未来」を選ぶのは、生存本能のようなものかもしれない。

承認欲求は強いが
嫌われるのも怖い

 もちろん彼らの中に承認欲求が欠落しているわけではない。むしろSNSの「いいね」へのこだわりが象徴するように「認められたい」という願望は強い。

 A・アドラーの教えを説いた心理学者・岸見一郎、古賀史健著『嫌われる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社、2013年)がベストセラーになった。「他者からの承認を求めてはいけない」という強いメッセージが若者の心に刺さり、発売後10年以上たった今も売れ続けているのは、嫌われることを死ぬほど恐れ、承認なしでは生きていけない若者がそれだけ多いことを物語っているのではないか。